試合開始直前まで上下するチケット価格

ベースボール観戦はチケット入手から始まる。最近は便利になったもので、チケットがない時でも百戦錬磨のダフ屋と交渉する必要はない。StubHubというeBay傘下のチケットのオンライン転売サービスがある。ジャイアンツは、このStubHubが頭角を現す前の2000年にDouble Playというチケット転売サービスを開始した。当日観戦に来られなくなったファン、シーズンに興味を失ってしまったファンなどのチケット転売を公式にサポートすることで、球場により多くの観客を集めようとした。

今シーズンは約2000席に変動価格を導入している。通常、チケットはシーズン前に発表された価格でシーズンを通して販売される。変動価格シートは、対戦相手、先発投手、人気選手の出場、順位、天気など、様々な要素によって上下し続けるのだ。たとえば正規価格で17ドルの外野席が、天気がぐずついた木曜日のナイターだと15ドルに下がったりする。ところがスライドでエースのティム・リンスカムが投げることになったら突然19ドルに上がる。メッツのヨハン・サンタナとジャイアンツのランディ・ジョンソンの新旧サイヤング左腕の投げ合いになった時は外野席が33ドルになった。この価格システムが発表されたときは値上げにつながると恐れられたが、価格を司るアルゴリズムが絶妙である。たとえばエースが投げたとしても、それが相手チームで、ジャイアンツがローテーションの谷間なら、価格は下がる可能性が高い。話題性だけではなく、地元ファンの心理も考慮しているのだ。

変動価格席は転売目的の買い占めの対象になりにくい、安い外野席や2階席に設定されている。熱烈なファンの中には、変動価格よりも常にある程度安い席がある方がいいという声もある。逆に最安で8ドルまで落ちる可能性があるので、消化試合が激安で買えるのならうれしいと言うファンもいる。試験導入1年目の反応は様々だ。1つ言えるのは、同じボールゲームでも、すべてが同じ価値ではないということだ。バリー・ボンズがホームラン記録に近づいていた時は、すべてのホームゲームがプレイオフのようだった。ボンズ・ファンだったら尚更だっただろう。そのようなライブ感が反映される席があるというのは、やはり面白い。

変動価格が設定されている外野席

バックネット裏の売店通路からの風景

iPhoneで重要シーンをいつでも再生

ジャイアンツは、他のチームに先駆けて04年から本拠地AT&T Park(当時はSBC Park)に無線LANの導入を開始した。Intelがパートナーとなり、同球場でCentrinoの発表会が開催されたこともあった。ただ当時のベースボール・ファンの反応は冷ややかで、「野球観戦にノートPCを持ってくるファンなんているの?」という感じだった。

今となっては、どちらの言い分も正しい。球場にノートPCを持ってくるベースボール・ファンは増えなかったが、iPhoneやBlackberryなどによって無線LANが利用され始めた。04年の1試合平均の無線LAN利用者数は94人、翌年も97人だったが、今年の7月時点では1619人となっている。

この7月からホットスポットではなく、球場全体がホットエリアになった。また「Digital Dugout」という球場内限定のウエブサービスが始まった。公式ホームページに、球場内のネットワークからアクセスした時のみ表示される。これが、なかなか便利である。まず「Wi-Fi Replay」。ダブルプレイや長打など、試合のポイントとなるプレイが再生可能になる。席を外している間に何かが起こってしまっても、すぐに確認できるから安心だ。しかも1つのプレイを、3台のカメラの映像を選択して楽しめる。ほかにも投球を1球ごとに分析するピッチングトラッカー、ボックススコア、選手の統計など、様々な情報を引き出せる。お腹が空いたら「Food Finder」を使えば、自分の場所やメニューなどから売店やレストランを検索できる。

iPhoneを使ってDigital Dugoutにアクセス

選手のプロフィール

他の球場のスコア

リンスカムが三振を取ったら、すぐにWi-Fi Replayで再生可能に。この時点で2つのカメラアングルが用意されている

イニングの合間に三振シーンをリプレイ

ボックススコア。ワンタップで選手のプロフィールや統計にアクセス可能

球場では判りにくい投球のコースや球種も、ピッチング・トラッカーで確認できる

聴覚障害者向けの球場内放送のキャプション・サービス

(左)自分の位置や食べ物の種類から周囲の売店やレストランのメニューを検索できるFood Finder (上)試合中の売店周辺は混み合うため、Food Finderがあると便利だ

Wi-Fi対応デバイスを持ってこなかったファン向けのDigital Dugoutゾーン

選手の詳細な情報やリプレイはテレビ観戦のメリットだったが、「Digital Dugout」を使えば、それらを球場に持ち込める。試合をより楽しむために、Wi-Fi対応のネット端末は必携アイテムである。

球場はテクノロジ企業が効果的に技術をアピールできる場。SCEAのPS3ゾーン

シャープもパートナー企業の1つ

Oracle。HPからパートナーの座を奪い取った