コムシス情報システムは今年の5月、SAPジャパンおよびNTTドコモの協力のもと、「モバイルSE支援システム」を開発した。同社は、コムシスグループに属する情報システム関連会社で、2009年4月に日本コムシスから分社して設立され、システムの企画、設計、開発、構築、保守、運用、管理を提供する。

そのコムシス情報システムが、将来的にはコムシスグループ全体への展開も見込んで開発、自社導入したのが「モバイルSE支援システム」だ。

SAP ERPにスマートフォンから接続する「モバイルSE支援システム」

コムシス情報システム
第二システム部 担当課長
岩本洋一郎氏

5月29日に発表された「モバイルSE支援システム」は、コムシス情報システムとSAPジャパン、NTTドコモが共同開発したシステム。基幹システムとして導入されている「SAP ERP」のモバイル利用を実現するシステムで、SAPジャパンが「SAP ERP」の製品支援を、NTTドコモがスマートフォンの選定および検証支援を担当したが、システムの開発・導入はコムシス情報システムが担当している。

「客先に常駐して働く社員が多いのですが、企業ではセキュリティ対策として私用PCの持ち込みが制限されることが多くなっています。外部からもメールの確認やポータルの利用ができるように、モバイルツールでの利用を可能にしたいと考えました」と、コムシス情報システム 第二システム部 担当課長の岩本洋一郎氏は開発の経緯を語る。

コムシス情報システム
執行役員 経営企画部長兼 システム本部 副本部長
青山明彦氏

日本コムシスでは、2008年10月にSAP ERPを導入した。経理や予算管理、経費精算といった社内業務に活用される基幹システムだが、当初はイントラネット内での利用のみで、モバイル活用は考えていなかったという。しかし、年末にはすでにモバイル活用案が出ていたという。

「SAP ERPを導入し、基幹システムが変更されたことでビジネスのリアルタイム性が重視され、従来以上にオンラインで処理しなければならないことが増えました。『これはモバイルシステムが必要だろう』と考え、12月初旬から開発に着手し、2月頃にはプロトタイプができていました」と、コムシス情報システム 執行役員 経営企画部長 兼 システム本部 副本部長である青山明彦氏は振り返る。

リモートデスクトップでSAP ERP画面を転送

現在メインで使用されているのは、HTC製の「HT-01A」だ。OSにWindows Mobileを採用しており、リモートデスクトッププロトコルが利用できることと、スライドでQWERTYキーボードが搭載されていることが機種選定のポイントとなっている。

「本体サイズはこの程度が最適だと思っていますが、本当は画面が一回り大きいのが理想的です。試用中のHT-03Aのソフトウェアキーボードは比較的使い易いですが、やはりハードウェアキーボードがあると使いやすさが違います」と青山氏。

NTTドコモのHTC製の「HT-01A」

実際の利用にあたっては、インターネット経由で仮想PC型シンクライアントシステム(NEC製Virtual PC Center)に接続し、SAP ERPサーバを利用する。画面転送型のシンクライアントシステムとなるため、端末側にはソフトウェアのインストールは必要なく、データも残らない。

シンクライアントシステムへの接続時の認証は、現在のところID/パスワードを利用している。
「スマートフォン紛失時の情報漏えいなどにおけるセキュリティ強化のため、二要素認証を組み合わせたワンタイムパスワードを組み込むこととしましたが、トークン等の製品はコスト面で見送りました。そこでネットバンクでよくある、乱数表を使ったワンタイムパスワード機能を自社で開発しました」と岩本氏は語る。

利用できるのは、メール、スケジューラー、SNSの他、決済、勤怠管理、経費申請等の管理職と一般社員が利用する基幹システムの全てとなっている。

「モバイルSE支援システム」のシステム概要