--BIを真に経営に生かすにはどうすべきか?--
吉田氏: 流通業であれ、製造業であれ、リーディングカンパニーといわれる企業では、経営者が重要なことを認識していることが多い。例えば、メーカー希望小売価格では、販売する側が「いくらくらいなら売れる」という設定をし、「そのためにどうすべきか?」を考える経営者がいる。ここで、なすべきこと見つけるためにBIを使おうということになるわけだ。「何が売れているのか」、「顧客は何を欲しがっているのか」といった傾向を把握し、分析する。分析でとどまってしまう例もあるが、それではいけない。SASの製品では、さまざまなデータを基に、「ああすればこうなる」、「こうすればああなる」とった予測を行うことができる。さらに、分析したデータからモデルを作成し、予見力を高め、一歩進んだ意思決定ができるよう支援することができる。BIを経営に生かすとはこういうことではないだろうか。
--SASの強みを教えてほしい--
吉田氏: 当社の使命は顧客の課題を解決して改善することだが、我々はBIベンダーとして独立的というより、ソフトベンダーとして世界的に大きな規模を持った企業だ。しかし、規模を誇る企業ながら、当社は株式を公開していない。これは大きな特徴である。株式会社の場合、会社は株主のものだから、会社をよくすることより、株価を上げることが最大の目的だとする考え方がある。米国の株式会社では、「株主に感謝する」という思想が徹底している。当社は株を公開していないので当然、株価の影響を受けず、その分、顧客への対応に特化することができる。
例えば、当社は売上高のおよそ4分の1を研究・開発に注いでいる。製品を改善していくことは、顧客の利益につながる。他の企業ではリストラを行うことがあるが、それはつぶれそうだからではなく、株価を下げないためであることが少なくない。だが、我々は違う。事業で得た利益は、市場や社員に還元することを目指している。無論、赤字を出してはいけないが、利益を増大させることだけが使命というわけではない。株式を公開しているか非公開かどうかで、企業の立場は大きく異なるのだ。
--SASの製品の特徴はどのような点か--
吉田氏: SASの戦略はソリューションの提供を進めていくことだ。したがって、流通業には「価格の最適化、棚卸しの予測をしてはどうか」、金融業には「顧客を理解して、売上げを伸ばさないか」といった提案をしていくわけで、「BIを買わないか」ということではない。ソリューションの中にBIが含まれているということになる。SASの製品はソリューションとしていったん企業に導入されると、プラットフォームとしてさまざまなことに使える。銀行であれば、顧客の情勢を把握するソリューションであるSAS Customer Intelligenceを採用すると、マネーロンダリング防止機能も与信管理機能も導入することが可能になる。つまり、SASの製品は単純なレポーティングツールではない。経営を改善するためには、企業の全体像を熟知していなければならない。それが予見力につながる。経営者に限らず、ビジネスを担う事業部長なら、経営に関わる人々の間でさまざま情報を共有できていなければならない。SASの製品はそのための機能が整っているのだ。
--一経営者として、人材と企業のあるべき関係についてどう考えているか?--
吉田氏: 国内では、企業と社員がいわば親子関係のようになっている例もあるが、これはあまり好ましいことでない。というのも、子は「あれがほしい」、「これがほしい」と親に訴え、それを親が叶えるという図式になりがちだからだ。企業と社員はプロとプロの関係であるべきなのだが、その認識が日本では足りない。社員はもう少し成熟しなければならない。会社がトレーニングしてくれることに依存するのではなく、自分から学び、会社に貢献していこうとする姿勢が必要である。