Expression Blend 3とSketchFlow
最後に、春日井氏はExpression Blend 3の新機能SketchFlowを紹介した。アプリケーションのデザインは静的な見た目を作るだけでは不十分である。操作に対応する一連の状態の変化や流れを意識しなければ良いUXは設計できない。これまでは、動くUIを作るにはプログラムが必要だったが、SketchFlowを使えばプログラムすることなくデザイナが詳細な画面設計を行えるようになる。
SketchFlowは、マウス操作だけで次々と画面設計を行い、アプリケーションのプロトタイプをデザインできる。見た目のデザインだけではなく画面遷移も指定することができ、スケッチした画面は実際にプロトタイプとして実行可能だ。デモンストレーションで紹介されたヤフーのプログラムもスケッチフローを使っていたという。
さらに、SketchFlowで作成した画面設計はMicrosoft Wordにエクスポートして仕様書のひな型を自動作成してくれる。スクリーンショットを撮って、各画面の解説ページを作る手間の大部分をツールが自動的に行ってくれるようになる。
Microsoftが語らなかったこと
全体を通してみればSilverlight 3とExpression Studio 3(特にExpression Blend)を中心としたキーノートだった。残念ながら、今後のWebを語る上で重要な要素であるモバイルや次期HTMLについて説明はなかった。
モバイルのUXという点ではMicrosoftのWindows Mobileは(NTTdocomoの「T-01A」ではかなりの改善がみられるが)、AppleのiPhoneやGoogleのAndroidに大きく後れをとっている。Silverlightのモバイル版についても黙りっきりだ。おそらく、近い将来Windows Mobileの次期バージョンの詳細と共に発表されることが予想されるが、それはWindows 7のリリース後になるかもしれない。Tech・Ed Japan 2009で何らかのアナウンスがあることを期待したい。
Webデザイナにとって、HTML 5の今後も気になるところだろう。現在、HTML 5はドラフト版でありながら、FirefoxやGoogle Chrome、Safariなどの主要なブラウザで実装が進んでいる。だが、少なくともこれまでMicrosoftはHTML 5に関して積極的なアナウンスを行っていない。一部の過激な人たちはHTML 5が登場すればFlashもSilverlightも不要になるというが、Microsoftの見解を聞きたいところである。
HTML(静的なページ)の時代が終焉を迎えた2000年以降、開発者以外がWebの実装に直接関わるのは難しくなってきた。しかし、UXの重要性が認識されると共に再びデザイナの存在感が増している。Silverlightアプリケーション開発にデザイナが取り込まれることによって、次世代のWebがどのような姿に変わっていくのか注視していきたい。