ミッドマーケットのシェア拡大に向けて

日本アイ・ビー・エム 執行役員 パートナー事業担当 岩井淳文氏

岩井氏は、パートナー戦略の対象について「特に定めているわけではないが、結果として、従業員規模が1,000人のミッドマーケットに落ち着くだろう」と説明した。例えば、重点施策の1つとして、SOAに基づいた推進を掲げているが、SOAのアセットは数量でのビジネスにシフトしたいので、結果として、マーケットが大きい中堅・中小企業向けのものが多くなるというわけだ。

「クラウドについても、プライベート・クラウドの対象が大手企業、パブリック・クラウドの対象が中堅・中小企業であることを踏まえると、3つのパートナーとの協業モデルのうち、2つがパブリック・クラウドを対象としており、結果として、ミッドマーケットの比重が増える」(同氏)

また、同氏は「当社はミッドマーケットでのシェアが低いが、パートナー経由でシェア拡大を狙っていきたい」と、ミッドマーケットに対する攻めの姿勢を強調した。パートナーが顧客のフロントエンドになった場合、サービスに関するコストはIBMには入ってこないが、サービスの部品に同社の製品が組み込まれることで、シェア拡大につながるのでよいという。

地方のパートナーとの距離も縮めたい

同社のシェアが低いという点では、地方のパートナーも同様である。同社は国内ベンダーに比べて、地方のパートナーとの連携が弱い。この問題を解消すべく、マーケティングや教育などの8つの項目において、強化を図っていくという。

また、社内で活用している「テレコール」や「情報検索ツール」といった販促ツールも可能な限り、パートナーに提供していくとのことだ。

もっとも、パートナーからすると、複数のベンダーと付き合いがあるのが当たり前であり、メーカーはいわば"選ばれる立場"にあるわけだ。パートナーに選ばれるには、他のメーカーに対する優位性を示す必要がある。

同氏は、今後、先に紹介した重点施策2~重点施策4について具体的なプログラムを発表する予定だと述べた。いずれのプログラムも「パートナーにとって利益をもたらすもの」になるという。

加えて、「パートナーが同社からクラウドに関する技術を取得することは、他社に対する競争力を持つことになる」と同氏。クラウドについては、ユーザー企業に対して、ハードウェアとソフトウェアの連携を行うところで、パートナーとしての強みが生かせるのではないかとのことだ。

現在、さまざまなメーカー・ベンダーがシェア拡大を目指すべく、中堅・中小企業のシェア獲得に注力している。その際、地方も含めたパートナーとの協業が重要性を増してくる。そのため、同社はこれまでも中堅・中小企業を対象としてビジネス拡大のための策を展開してきたが、この不況を機にさらに前進したい構えだ。不況から脱した時、同社の策の有効性が見えてくるだろう。