辻野氏に続いて基調講演をファシリテートするのは、グーグルでシニアプロダクトマネージャをつとめる及川卓也氏。最近ではGoogle Chromeの"顔"としてもおなじみの方である。開口一番、同氏は「米国で開かれたGoogle I/Oで、奇しくもCEOのEric Shmidtが"Now it's time."と表現したが、まさにいまがそのとき。Webがもっとパワーをもつ時代になってきた」と語る。
「これまではネイティブアプリケーションとWebアプリケーションには大きな差があった。だがGoogleは2004年にGmailのサービスを開始し、次にGoogle Mapsをはじめた。この頃からAjaxのすごさを徐々に実感できるようになり、Webアプリケーションの可能性が大きく拡がっていった」と及川氏は振り返り、「ブラウザが進化することで、Webアプリでできることがどんどん増えている。我々と開発者で今度は何が作れるようになるのか、それが今後の課題」としている。
高速JavaScriptエンジンでもってさっそうと登場し、ユーザをも開発者をも驚かせたGoogle Chrome。その開発者のひとりでもある及川氏は「高度なアプリケーションをWebで動かしたいと思ったとき、そのスピードは? ストレージはどうする? などの疑問に一気に回答したのがChromeだった」と、Googleが業界全体に与えたインパクトの大きさを自負する。そして、「これからのWebを大きく変えていく存在が、新標準の"HTML5"」という。
HTML5で最も大きく変わることをひとつだけ挙げるとするなら、やはり動画の扱いに尽きるだろう。これまでプラグインなしでは実現できなかったような動きが、タグで宣言し、JavaScriptで書いてやるだけで、らくらくと実行できるようになるのだ。及川氏は「Chromeの宣伝ビデオを使った動画のデモンストレーションを行うたびに"これは本当にFlashを使っていないの?"と聞かれるが、本当に使っていないんです」と笑いながら力説する。
Google、そしてChromeとしては、
- Chromium/Webkitを通じて、HTML5の各機能を実装
- HTML5標準化へ働きかけ
- マルチプラットフォーム対応の推進と拡張性の追加
を進めていくという。先日、ChromeのWindows版およびLinux版がテスト公開されたが、及川氏は「これらはまたテスト版と言うこともあり、非常に不安定。だがマルチプラットフォームへの対応はGoogleとして必ずやらなければならないこと。オープンソースで公開しているので"犠牲になってもいい"という人は、ぜひ積極的に試してほしい(笑)」とフィードバックを呼びかけた。