新たなライブラリを作成する権限はすべての人が保持しており、社員が自分たちの判断でライブラリの追加を行うこともできる。基本的には、社内から依頼を受けて、情報システム開発室が作成しているそうだが、中にはユーザ自身でシステムを構築し運用している部門もある。
陶器を扱っている部門では、今では専用のサーバを持ち、エンドユーザが運営を行っているという。佐々木氏は「ときどき管理者パスワードを変えられて、私自身もログインできないことがあります」と冗談まじりに語る。
陶器の部門では、当初、製造・販売のすべてを管理するシステムの導入を検討したこともあるそうだが、特異な業務のためカスタマイズ部分が多く、見積もり額が約2億円となったため導入を断念したという。その後、基本業務フローは情報システム開発室にて開発を行い「デヂエで業務を補完する」という運用を始め、現在では大きな支障もなく軌道に乗っているとのこと。
操作性以外のデヂエのメリットとしては、フィールド単位でセキュリティ設定が行え、ユーザ単位でアクセス制御ができる点が大きいという。佐々木氏は「操作性だけを考えると、ユーザはExcelが一番いいんです。ただ、Excelは複数のユーザで同時に開くことができない。デヂエは、Excelに近い操作性で同時アクセスができ、さらにレスポンスがいい。これがデヂエを使う一番の理由です」と語る。また、どこにいてもサイボウズにさえログインできれば、同じデータベースにアクセスでき、件数に依存せず同じスピートでアクセスできることも特長だという。
そのほか、データの入力・編集・削除などをトリガーにした、メール配信ができるのも役立っているという。グレープストーンではこの機能を、社内からユーザアカウントの登録・削除依頼があった際に、データが更新されたことを逐一特定ユーザに知らせたいようなライブラリ等で利用している。
グレープストーンではサイボウズ製品を導入してから8年ほど経過するが、社員の中には基本的な機能だけを利用し、その他の便利な機能を利用していないケースもある。そのため佐々木氏は、ときどきプロジェクタを使った説明会を開催したり、「サイボウズ Office」の掲示板機能を使って、TIPSや新機能紹介を行い、社員のスキルアップを図っているという。
データベースを使ったシステムというと、つい大がかりなものを想像しがちだが、グレープストーンが実践しているのは、みんなで共有しなければならないデータを、ライブラリを作ってどんどん貯めていくという非常にシンプルなものだ。これにより、データの一元管理が可能になり、また絞り込みや集計といった機能を使うことで、膨大なデータ量でも簡単に把握できるようになる。
中小企業の中にはデータ共有を行いたいが、利用者のスキルが低く導入に踏み切れないケースもあるだろう。そのような企業に対して佐々木氏は「サイボウズを利用することですね。サイボウズから入ることによって、コンピュータに対する敷居を低くすることができます。使ってみると、『なんだ、できるんだというこになる』」とアドバイスする。
エンドユーザがデータベースを作成するというのは、システムにおいては理想型だろう。ただ、スキルを考えるとそれも難しい。しかし、企業システムにおいて、すべてがOracleやSQL Serverである必要もない。とくに、情報系ではデヂエのような簡易なデータベースを採用することで生産性が大きく向上し、エンドユーザ自身による運用が可能になる場合もある。 そういう意味で、グレープストーンの「Excelの代わりにデヂエを使う」というのは、用途によるデータベースの使い分けの1つであり、デヂエの最大の特徴を活かした使い方といえるだろう。