制度の導入にはワーキンググループが主導
この制度を導入するにあたっては、会社として必要な人材を明確化したいという狙いがあったという。会社の価値を高めるために重要なのは人材であるが、それまでは会社が求める人材が不明確であったため、社員が異なる方向に進んでしまうこともあったという。そこで、7つの将来的な人財像を定義し、会社が求める人材と社員が目標とする人材の統一を図ったのだ。
導入に際しては、コンサルティング会社の助言なども受けたそうだが、最終的には社員有志によるワーキンググループが主導的に進めたという。清水さんは「コンサルティング会社の意見は、そのままでは当社に適用しづらい部分がありました。また社員の意識としても、『あの人が始めた制度なら、やってみようか』という受け入れやすさがあります。そこで社員有志によるワーキンググループを結成し、同様の制度を実施している他の企業の事例なども参考にしつつ意見を出し合うことで、当社に最適な制度を策定しました」と語る。
社内の意見や業界動向などに合わせて柔軟に対応
IT技術の進歩は早いため、HCMサイクルの内容は柔軟に修正しているようだ。「例えばComCPは年1回の見直しをしていますし、研修の内容は各組織の育成担当者からの要望に応じるなどの形で随時変更しています」(清水さん)。
当初の想定とは異なり見直した部分もある。「当初、ComCPは全レベルとも面接を必須としていましたが、審査する社員の負担を軽減するため、下位レベルの審査を簡略化しました。キャリアデザインシートの項目も、社内からの要望に基づいて追加・変更しました」(清水さん)。社員からの意見はイントラネットからの投稿や研修実施時のアンケート、年1回実施する社内アンケートなどで、随時くみ取るよう心がけているという。
そのほか、人事面でのユニークな制度として、社内公募制度が挙げられる。これは部署単位やプロジェクト単位で必要な人材を社内から募集するもので、毎年4月と8月の年2回実施している。これにより、現状の業務が自分のプランと合わない場合は、職種を変更することが可能だ。応募については、上司には知らされないため、気兼ねすることなく応募できるという。
HCMサイクルへの各種施策の組み入れを検討
ComCPの資格は70%以上の社員が取得しており、2007年度に行ったアンケートでは、85%の以上がHCMサイクル制度に対して好意的な意見を寄せたという。
スキルアップ制度の今後について、清水氏は「今のところ、HCMサイクルに代わる新しい制度の導入は考えていません」と語る。現行制度の若干の手直しはあり得るとしながらも、「今後は『HCMサイクルは社員が細く長くキャリアアップを続けられる制度』とのメッセージを伝えていく取り組みを、進めていきたいと考えています」(清水氏)という。
さらに、制度の拡充も検討課題としている。例えば同社では最近、人事部内に「キャリアアップ支援室」を設立し、社員からのキャリアアップに関する相談や上司からの部下育成方法に関する相談に応じたり、女性社員のキャリアアップをサポートしている。「こういった施策をHCMサイクルにいかに組み込んでいくかを、今後は考えていきたいです」と、清水氏は将来の展望を語った。