目標設定→スキルアップ→成果確認のサイクル
NTTコムウェアは2004年以来、独自のスキルアッププログラム「HCMサイクル」を導入し、一定の成果を挙げている。そこで、制度の内容について、HCMセンタの清水さんに話を聞いた。
HCMサイクルのHCMとは「Human Capital Management」の略であり、人材は「人財」、つまり会社の財産だという考え方に基づいている。具体的には、
1. 目標の設定
2. スキルアップを図る
3. 成果を確認する
の3ステップの繰り返し行うことにより、社員のスキル向上を目指すものだ。
目標設定ではまず、自分が将来なりたい職種を7つの人財像から選択する。この人財像は、NTTコムウェアのビジネスフローに沿って、事業運営上必要なものが定義されている。
そして、その職種で到達したい当面の目標レベルであるグレードも設定する。グレードは、初歩的レベルのL1(指導の下に業務遂行できる)から最上位のL7(市場への影響力がある)まで7段階に分かれており、IPAが定める「ITスキル標準」に基づいて定義されたという。
目標は、2年後、5年後、将来という3つのスパンで、これまでのキャリア、今後1年間の具体的なキャリアアップのための取り組みなどとともに、毎年「キャリアデザインシート」に記入する。
目標設定の参考情報としては、先輩社員がそれまで携わってきた業務の紹介や取り組んだキャリアアッププランを紹介したり、その職種での具体的な業務内容を紹介する育成情報システム「My育トラネット」、人財ごとの情報交換の場である社内SNS「人財別コミュニティ」、人財別の育成情報を提供する「キャリアナビゲーション」など、さまざまな仕組みを用意している。
またキャリアデザインシートには上司からの提言欄があり、上司と相談しつつ目標を立てていく形になっている。
そのほか、年度内の業務予定に合わせたスキルアップ計画を作成する「チャレンジシート」の記入も半年ごとに行っている。
2ステップ目のスキルアップでは、キャリアデザインシートに記入したキャリアアップ計画に従い、実際のスキルアップを図る。スキルアップに対しては、150を超える研修コースが用意されているほか、社員が講師を務める「業務専門家育成塾」で「ノウハウの伝授」を図っている。
総務人事部HCMセンタ主査の清水夕子さんは「業務専門家育成塾は、特定の業務分野における体系的な知識の習得や、社内での連携促進を目的として実施しています。社員が講師を務めることで、一般的な講習では得られない、当社独自の業務ノウハウを共有できます」と、そのメリットを語る。
3ステップ目の成果確認では、現在の自分のスキルを同社独自の認定制度である「ComCP」(Comware Certified Professional)を使って判定する。これは、ITスキル標準に準拠し、スキルを種別とレベルの観点から細密に定義した人財像とそのスキルセットであり、個人の目標と現在のスキルとのギャップを可視化できるという。
また、認定後も継続してスキルアップを図るため、取得したComCPの有効期限は3年間と定めている。新技術の登場などによるスキルの陳腐化への対応や、スキルの停滞を防ぐ意図もあるようだ。
目標とするComCPを取得できた場合は次のステップを目指し、取得できなかった場合は再チャレンジする。こうしてサイクルを繰り返すことで、個々のスキルアップを図っていく制度なのだ。