一方で、米オラクルによる米サンの買収は、新たな領域での事業拡大を狙ったものだ。いわばソフトメーカーの殻を破り、総合ITベンダーへと一歩を踏み出す買収といえる。
すでに、ヒューレット・パッカードとの提携によるExaData事業でハードウェアビジネスに参入しているとはいえ、ここにサンが持つサーバ製品が加わることで、オラクルは、IBMやヒューレット・パッカードと対峙する総合ITベンダーのポジションを得ることになる。新事業領域への進出により、提携関係にある富士通との距離感や、オラクルを活用していたITベンダー各社との関係がどうなるのかが注目される。
こうした新たな事業領域への進出を目論む企業にとっては、この経済危機はむしろチャンスとなっている。米デルのマイケル・デル会長は、来日した際に、「むしろこういう時期だからこそ、当社にとってはチャンスともいえる」として、買収戦略を加速する姿勢を見せている。
株価低迷にも直結している厳しい経済環境は、キャッシュを持っている企業にとっては、補完する事業の獲得や新たな事業へと踏み出すための企業買収を推進しやすい環境になっているともいえよう。
電機業界、IT業界で相次いでいる企業買収や事業譲渡といった動きは、まだ続くことになりそうだ。景気の回復は2009年度下期以降といった見方が広がっているが、それでも企業が求められる体質は、これまで以上に筋肉質なものとなるだろう。それだけに、事業再編への取り組みは継続的に進められ、それに伴い、事業譲渡の動きが見られる公算が強いからだ。
そして、その成果についても注目しておきたい。再編後の成果を、いかに短期間で導き出すかが経営トップに求められているのは明らかで、グローバル化、スピード化が求められる経営環境のなかでは、その要求がますます高まっている。これまでの再編とは異なり、迅速な判断と迅速な成果が求められている。