電機、IT業界における企業買収、事業譲渡が相次いでいる。
昨年発表されたパナソニックによる三洋電機の子会社化以降も、ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスの合併、富士通による富士通シーメンス・コンピューターズの完全子会社化、パイオニアとシャープによる光ディスク事業の合弁会社の設立、富士通によるHDD事業の東芝への売却、セイコーエプソンの中小型ディスプレイ事業のソニーへ一部売却、NTTドコモによるテレビ通販大手オークローンの子会社化など。
また、海外でも米オラクルによる米サン・マイクロシステムズの買収といった大きな動きも見られている。
さらに、系列販売会社を統合することで、注力分野への集中を高める一方、管理コストの削減などに取り組むといった例も見られている。富士通による富士通ビジネスシステムの完全子会社化などもその一例だ。
こうした企業買収および事業譲渡が相次いでいる背景には、100年に一度といわれる経済危機に直面した企業が、相次ぎ業績を悪化させており、それとともに、「選択と集中」を旗頭とした事業再編を加速せざるを得ないという点が見逃せない。
例えば、電機大手9社の2008年度連結決算では、8社が最終赤字という業績。2009年度の業績見通しでも最終黒字を見込むのは3社だけという厳しい内容となっている。パナソニックの大坪文雄社長は、「足を引っ張る事業を、切ることが大切」と言い切り、「不採算事業の撲滅やグローバルな拠点再編に取り組む。撤退、縮小、合理化で得たものを、思い切って次の成長分野に投資する」と語る。
業績悪化要因となる事業を撤退、縮小、売却することで、業績改善につなげようというもので、この姿勢は各社トップに共通したものだといっていいだろう。
業績悪化要因を取り除くという点だけをみると、マイナス型の再編といえるが、ここで大切なのは成長分野への投資を伴うという点だ。これによって、マイナスからプラスへと転換することができる。
日立製作所および東芝は、所有していた液晶パネル生産のIPSアルファテクノロジの株式をパナソニックに譲渡したが、両社とも今後の投資分野は社会インフラ事業領域としており、まさに得意とする分野に投資を振り分けることで、安定的に収益を確保できる地盤づくりに挑むことになる。
統合により競争力を強化
また、世界的な競争環境に勝つために統合の道を選ぶという動きもある。最たるものが、ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスの合併だろう。 NECの半導体事業を独立させ設立したNECエレクトロニクスと、日立製作所と三菱電機の半導体事業の統合によって設立したルネサステクノロジとの合併は、まさに国内連合によって、世界の半導体メーカーと戦う体制を目指したものだといえる。世界第3位の事業規模にすることで、生き残りを賭けて、世界で戦える体制へと再編した。 富士通による富士通シーメンス・コンピューターズの完全子会社化も、やはり世界戦略を見据えたものといえる。
欧州に拠点を持つ富士通シーメンスを、完全子会社化するとともに富士通テクノロジー・ソリューションズに社名を変更。サーバー事業の中核拠点に位置づけて、2010年度には、現在の1.8倍の規模となる全世界50万台の出荷を目指すとともに、世界4強入りによって、サーバー市場における存在感を増す考えだ。
富士通の野副州旦社長は、「グローバルのことを考えないと生き残れない時代。また、当社のグローバルパートナーであるマイクロソフト、オラクル、SAPなどと50対50の関係を構築するためにも、日本だけでなく、グローバル市場でパートナーシップが組めることが大切。これからは、日本はマーケットのひとつに過ぎないという考え方で事業を推進していく」として、富士通シーメンスの完全子会社化を、富士通のグローバル化の試金石にする考えだ。