マイクロソフトのクラウドサービスである「Windows Azure」への関心が日増しに高まっている。開発者などを対象に、今年3月に米国で開催された「MIX'09」でも、Azureに関する新たな情報が提供され、今年秋の北米での商用サービス開始に向けて、開発が着実に進展していることを示した。

一方、日本においては、現時点では2010年以降の商用サービス開始が計画されており、北米での商用サービス開始以降、グローバル戦略のなかで、詳細などが随時明らかになってくる予定だ。だが、日本での展開がどうなるかは気になるところ。北米における最新情報、そして、日本における現時点での取り組みについて、マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘執行役、同じくデベロッパー&プラットフォーム統括本部カスタマーテクノロジー推進部 平野和順部長に話を聞いた。

--まず、3月に開催されたMIX'09で明らかになったAzureに関する最新情報を教えてください

マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 カスタマーテクノロジー推進部 部長 平野和順長氏

平野 MIX'09で明らかにされたものとしては、.NET環境をフルトラストでサポートするという発表。そして、SQLサービスに関する変更の2点があげられます。まず.NETですが、Windows32環境でのDLLをサポートしました。お客様のリクエストで、UIの部分は.NETで作りたいが、ビジネスロジックの部分では、DLLを使っており、そこをなんとか救ってほしいというリクエストが多かった。これを反映したものです。ただ、Azureが64ビット環境で動いていますから、64ビットでリビルドし、デプロイするという制約があります。

また、CGIのサポートも発表しています。PHPをAzureで動かしたいというユーザーからの要望が多く、それに対応しました。Azureを、ウェブに特化したアプリケーションのホスティング環境として見た場合に、CGIがないと、やはり問題が大きい。その点でも、CGIをサポートするというメリットは大きいといえます。ただ、フルトラストとはいっても、COMコンポーネントはサポートしていません。

--SQLサーバに関してはどんな形になりますか

マイクロソフト 執行役員 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 大場章弘氏

平野 Azureでは、SDSにおいては、SOAPを使ってデータを読み書きする手法で提供する予定でしたが、ネイティブなTransact-SQLをサポートしてほしいという要望が多いため、これに応えるべく設計変更し、ネイティブなSQLサーバとほぼ同じ振る舞いができるようになりました。もちろん、SOAP、RESTでアクセスするケースもサポートしていきますが、WebアプリケーションのバックエンドにSQLサーバを使っていただいているケースが非常に多いことから、SQLサーバの直接サポートにより、それをクラウド上で動かすことが可能になりました。ユーザーが利用するアプリケーションから、SQLサーバに直接アクセスしているがごとく、環境を整えたのは、大きな変更です。まさにクラウドのデータベースという形で活用できます。

大場 これは、大手企業ユーザーや、パッケージを持っているパートナー企業から要望が大きかったもので、好意的に受け入れられています。これまでは、過去とのしがらみを切ってでも、クラウドの新しいアーテキチクャーを構築するという動きが強かったのですが、それだけではお客のニーズに応えきれないところがあるとして、デザインチェンジを図っています。これは、正直なところ、社内でもかなり議論があった部分です。ISVをはじめとするパートナー企業が、Azureの活用に踏み出しやすくなったといえます。