「セールスフォース・ドットコムは、クラウド・コンピューティング企業として世界で初めて年間売上高が10億ドルを突破しましたが、これは極めて重要なことです」と続けるルーカス氏。実際に同社のサービスは全世界で5万5000以上の企業が導入、150万人以上のユーザー数を誇っており、名実ともに世界最高峰のクラウド・コンピューティング企業へと成長した。
ここでポイントとなるのが、そのサービスを大手から中小までさまざまな規模の企業が利用しているということ。クライアント/サーバ型の従来モデルでは予算・内容ともに大手企業と中小企業で大きな格差が生じるが、クラウド・コンピューティング上のサービスならばあらゆる規模の企業が同等のサービスを利用できる。そしてセールスフォース・ドットコムが成長するほどユーザーも新たな次元のサービスを受けられ、更なる事業発展が見込めるのである。
さらにルーカス氏は「セールスフォース・ドットコムは提供するサービスだけでなく、ビジネスモデルそのものが革新的です」と、社会貢献活動の成果についても言及した。同社では戦略的な社会貢献を行うため、創業当初より「1/1/1モデル」に取り組んでいる。これは就業時間・株式・製品の各1%を、利益目的ではなくコミュニティや非営利活動の支援に充てるというもの。実際に創立10周年となる現在まで、12万5000時間以上の地域貢献活動、5200を超える非営利組織へのライセンス無償提供、1300万ドルを超える助成金などの実績を上げてきたという。
大手企業しか行えなかったサービスを中小企業でも実現
ここでルーカス氏は、同社が提唱する「リアルタイムクラウド」について解説した。これはインフラに世界初となるリアルタイムのクラウドを導入することで、300ミリ秒以下のレスポンスタイムを実現した「Force.com Cloud Infrastructure」、自由にビジネスアプリケーションが構築できる高速なクラウド型プラットフォーム「Force.com Cloud Platform」、そして完成度の高いクラウド・アプリケーション「Salesforce CRM Cloud Apps」によって構成されている。
Salesforce CRM Cloud Appsに含まれるのは、SFAをはじめ多様なサービスと連携し企業の生産性を高める「Sales Cloud」、コールセンターやカスタマーポータルなどの周辺サービスを提供する「Service Cloud」、ユーザー自身がプラットフォーム上で独自アプリケーションを構築できる「Your Cloud」の3種類だ。
まずSales CloudではSalesforce.comの既存機能に加えて、「ジーニアス」と呼ばれる類似商談の検索機能、プレゼンテーションスライドの検索とドラッグ&ドロップでの取り込みを実現したプレゼンテーションの組み立て機能、プレゼンテーションやコンテンツをURLリンクに変換して相手先へ送れるコンテンツ配信機能など、2月に提供が開始された「Salesforce CRM Spring '09」からの新機能を中心にデモを交えて解説した。
またService Cloudでは、オペレータが介入する機会を減らしながらも顧客満足度の向上が図れるカスタマーポータル機能、Googleをはじめコミュニケーション・サービス「Twitter」やSNSサービス「Facebook」と連携したソリューションの取り込み機能が紹介された。
最後に再び登壇した宇陀氏は「このようにクラウド・コンピューティングは大規模なカスタマーポータルをはじめ、今まで大手企業しか行えなかったサービスが中小企業でも実現できる大きな可能性を秘めています。ぜひ皆さんにもユーザーやパートナーなどさまざまな形でお付き合いいただけたらと思います」とコメントし、基調講演を締めくくった。