次期システムの候補には、開発工数の削減や過去のノウハウを継承できるという点から、従来と同じくサーバOSにWindows Serverを、データベースにはSQL Serverを選択した。各バージョンの機能差を比較していたところ、今年の1月から出荷が開始されたマイクロソフトが提供する中小企業向けのサーバソリューション「Windows Small Business Server 2008」の存在を知ることとなり、今回の導入に至る。
「SBS 2008の詳細を見て、まず最初に驚いたのがコストメリットの高さです。Windows Server 2008、SQL Server 2008、Microsoft Exchange Serverをそれぞれ単体で購入する場合と比べて設備投資コストが約半額まで抑えられるため、弊社の企業規模では非常に助かります」と語る豊饒氏。メリックスの従業員数は14名なので、ユーザー数が75人以下(もしくはクライアントPCが75台以下)というSBS 2008のライセンス制限もまったく問題ない。
さらに、SQL Server 2008から搭載された透過的データ暗号化、データ操作監査、ポリシーベースの管理といったコンプライアンス強化が図れる新機能も大きな魅力となった。豊饒氏は「確かに現段階ではSQL Server 2000でも業務的な支障はありません。しかし、将来を見据えるとこのタイミングでのバージョンアップが最適だと判断しました」と語る。
このような理由から、メリックスではSQL Server 2008が付属し別サーバにインストール可能なSBS 2008のPremium エディションへのシステム移行を開始した。
豊饒氏はシステムの移行作業について「データベースはお客様からの受注対応で日々フル稼働しているため、仮に土日だけ受注を止めたとしても月曜日には動く状態まで仕上げる必要がありました」と語る。月曜日に社内システムが動かなければ、製本や出荷などあらゆる業務が止まってしまう。つまり、ハードウェアの設置から設定完了まで、実質的なシステム移行作業はわずか2日間に限定されていたのである。
メリックスがSBS 2008を選んだ理由の一つには、こうした状況に対応する導入のスムーズさを備えていたことも挙げられる。「SBS 2008にはActive Directoryの認証情報が簡単に引き継げるマイグレーションツールをはじめ、移行支援のための豊富なツール類が付属しています。私自身も細かい移行手順までは知らなかったのですが、1名の外部エンジニアの方と社内スタッフだけでシステム移行が実現できました」(豊饒氏)。
また、セキュリティパッチの確認や更新を一括して行える「Microsoft Windows Server Update Services(以下、WSUS)」の存在も大きいという。
WSUSについて豊饒氏は「今まで1台ずつ個別に行っていた作業が、画面を見ながらの承認処理だけで簡単かつ短時間に行えるのは助かります」と語る。この効果は実績としても表れており、20台のクライアントPCに対して従来は年間で約100-150時間の管理工数を必要としていた作業が、WSUSの導入後は約10時間まで短縮したという。
豊饒氏はこの点について「営業や販売などとは違い、システムメンテナンスは直接的な収益を生まない業務です。それどころか、社内でメンテナンスができなければ外注コストまで発生してしまいます。中小企業では貴重な人的リソースを収益業務へ集中するためにも、より効率的なメンテナンス性が求められるのです」と語る。