Xeon 5500番台の実証実験を実施
これに対し、Xeon 5500番台は、サーバ統合に対し「スマートかつ高性能」を、仮想化に対し「柔軟な仮想化環境」を、低電力に対し「自立的な省電力機能」をそれぞれ提供するとしており、エンタープライズレベルのシステムにおいてその実力が発揮できるとされており、新日鉄ソリューションズでもその実証検証を行った。
検証方法は実アプリケーションを使って、スペック値ではなく本番システムにおける性能を検証する方法を採用。サーバ統合としてデータベース(DB)層の処理でチップの基本性能を検証したほか、ミドルウェア(MW)層の処理でスレッド処理高速化やメモリバス拡大などの機能を生かした性能の高さを検証した。また、仮想化として、ハードウェアによる仮想化支援機能「Intel Virtualization Technology(VT)」の効果の検証、ならびに低電力としてシステム利用時の実消費電力の検証を行った。
DB層での検証は、Xeon 5500番台ならびに1世代前のXeon 5300番台のシステムにOracle DB Serverを用いて、バッチ処理ではなくショートトランザクション、高スループットのDBアクセス処理を実施、結果は、5300番台で1万TPS程度、復活したHyper-Threading(HT)Technology抜き5500番台で1万5,000~7,000TPS程度、HTを有効にした場合は5300番台比で2.2~2.3倍程度のスループットが出たという。
一方のMW層での検証は、証券系デイトレーダアプリケーションのワークロードを利用、WL ServerおよびOracle CoherenceにXeon 5100番台、同5500番台を使って比較を行った。結果は、マルチスレッド処理の性能向上がCoherenceの並列処理に適合し5500番台のスループットは5100番台比で12倍に達したという。
仮想化の検証では、MW層と同じくXeon 5100番台とXeon 5500番台を使用。それぞれに直接アプリケーションを載せた場合と、「Xen 3.1」を載せた場合のほか5500番台ではVTをサポートしたバージョン「Xen 3.3」を載せた場合で、Lmbenchを使った基本特性検証(仮想メモリ操作を対象)を行った。結果は、5100番台と5500番台では直接の性能差はあるものの、Xen 3.1での仮想化によるオーバヘッドの比率はほぼ同じとなった。しかし、VTの効果によりXen 3.3では仮想化オーバヘッドはXen 3.1使用時に比べ1/20に削減され、結果として仮想化を行っても旧世代(5100番台)の非仮想化環境よりも高速になったという。
消費電力はMW層の検証として測定、コンセントの手前に電力測定装置を設置して実施した。ただし使用したCPUは5100番台からシングルコアXeonプロセッサ 2.8GHz(Irwindale)に変更、これと5500番台(2.8GHz×2)を同等性能にする場合の比率は5500番台1個に対しIrwindaleは12個必要となる(クラスタリングによる性能劣化を考えるとさらに差が広がる可能性があるとのこと)、一方、1台あたりの消費電力は5500番台とIrwindaleでは3:2となり、同一のスループット(2400 HTTP/sec)を実現するために必要な電力は8,000w超のIrwindaleと比べ1/8となる1,030wで済んだという。
これらを総合すると、「我々の欲しい性能を持っている」(同)であり、クラウドコンピューティングの基盤足りえることを証明したとする。
クラウドは次代の主力アーキテクチャ
インテルのインテル技術本部 本部長である及川芳雄氏 |
これらの性能に対し、インテルのインテル技術本部 本部長の及川芳雄氏は、「5300番台の時はオーバヘッドが大きすぎたが、5500番台でVTが入ったことにより仮想化が実際に使えるフィールドまで下がってきた」と語るほか、「パフォーマンス的にはHTが復活したことが大きいことに加え、Turbo Boost Technologyにより理想的なリソース活用が可能になった」(同)とする。
また、「Xeon 5500番台を導入することでコストメリットだけでなくIT基盤を次世代に移行することが可能になる。つまり、仮想化によりクラウドの環境に移行しやすくなる。それは今のITから未来のITへと投資を回収しながら移行することができることを意味する」(同)とし、今後も互いが連携して、クラウドコンピューティングを今後の主力アーキテクチャと位置づけ推進していきたいとした。