ワークステーション、CAD/CAMからさまざまな業界へ
Hewlett-Packardは3月30日(米国時間)、同社の新しいワークステーション「HP Z Workstationシリーズ」を発表した。4月6日には日本ヒューレットパッカードからも発表がおこなわれている(レポートはこちら)。Z WorkstationシリーズはHPが送り出す渾身のワークステーションプロダクト。今後、日本市場におけるワークステーションの動向を探るうえで興味深いプロダクトであり、その取り組みから2009年以降のワークステーションの動向を探ることもできる。
HPのワークステーションはアジアでは平均40%以上のシェアを占め、日本でも2008Q1からQ4までの4期連続でナンバーワンを実現している(パーソナルワークステーション台数ベース日本国内シェア、Mobileワークステーション込み)。ナンバーワン争いは拮抗しており今後入れ替わりがあるかもしれないが、HPが2008年を通じて好調だったことは事実だ。同社は今後は日本市場への投資を続け、さらなるシェア拡大を目指すとしている。
ワークステーションといえばこれまでは大手製造業におけるCAD/CAM/CAE用のマシンとして採用されることが多かった。しかし最近では中堅の製造業や医療分野、金融、石油ガス業界、ミッドレンジCAD、コンテンツクリエイション、マルチメディアクリエイション、DCC分野、3次元建築分野、教育分野など活躍の場が多様化している。
機能をチョイスするワークステーション - 業務要求と価格要求のバランス
多様化に対する解答が機能のチョイスだ。HPの例を見てみよう。Z Workstationシリーズの構成はシンプルだ。まず、次の3つの基本シリーズが用意されている。
- Z400 … エントリ(シングルソケットXeon 3500、最大メモリ16GB)
- Z600 … ミッドレンジ(デュアルソケットXeon 5500、最大メモリ24GB)
- Z800 … ハイエンド(デュアルソケットXeon 5500、最大メモリ192GB)
そしてそれぞれのシリーズごとに最小構成からオプションを追加したカスタマイズ構成まで自由な編成が可能となっている。
ワークステーションの求められるシーンが多様化しているため、必要とされる機能も分野ごとにさまざまだ。CPU性能を要求するものもあればグラフィック性能を要求するものもあり、逆に低価格が要求される場合もある。Z Workstationでは3種類のシリーズ構成と柔軟なカスタマイズ機能が、こうした多種多様なワークステーション要望への解答とされている。
経済が厳しい状況に置かれているなか、これまでのように高性能なワークステーションを購入すれば万事OKという状況は成り立たなくなっている。ワークステーションレベルにおいても必要に応じて最適な価格のプロダクトが求められているのだ。
価格検討にはダウンタイムやスケーラビリティも含める
ワークステーションの採用を検討しているということは、すでに一般のPCよりも高い信頼性が必要とされている分野ということになる。廉価性を全面に打ち出したPCも市場に多く存在するため、ワークステーションプロダクトは割高に見える部分もたしかにある。しかしそのケースでは、ダウンタイムやスケーラビリティの欠如がもたらす機会損失を価格計算からはずしている可能性がある。
Hewlett-Packardで日本を含むアジア太平洋地域(Asia Pacific and Japan)のパーソナルシステムグループ コマーシャルシステムユニットのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャを務めるDennis Mark氏は「コストのほとんどはダウンタイムから生じるもの。信頼性の高いZシリーズを購入すれば最小のダウンタイムで済む」とその価値の高さを強調する。
ワークステーションと名うって販売されるプロダクトは、通常のPCに比べて高い信頼性とスケーラビリティの良さを期待できる。一度動き出した業務がPCの故障で中断されたり、性能がボトルネックになって業務に支障を来した場合、損失がどれだけ生じるかも考慮して価格を検討すれば、ワークステーションのコストパフォーマンスがわかりやすくなる。
グリーンへの取り組み - 電源効率と消費電力の見積り
世界経済の流れとして、グリーン技術への注力と、二酸化炭素排出量の抑制への流れは今後も継続することになるとみられる。ワークステーションを購入する場合も、最終的に導入したワークステーションが全体でどの程度の電力を消費することになるのかは見積もっておく必要がある。
ワークステーションにおける二酸化炭素排出量の抑制となると、もっとも簡単な指標は消費電力をいかに抑えるか、ということになる。Z Workstationシリーズの場合、3シリーズのすべてで80-Plus電源ユニットを装備している。これはZ400、Z600で85%、Z800で88%の電源効率を実現したもので、同クラスのプロダクトとしては最初に投入される電源効率のいいプロダクトとなるようだ。企業姿勢を示すうえで、こうした指針を判断基準にするのはひとつの方策ではある。
プロダクトとしての出来も判断基準
ワークステーションの判断は性能一辺倒になりがちだが、長い間使い続ける道具なだけに、細かい使い勝手も評価対象には加えておきたい。Z Workstationシリーズを例にあげると、たとえば2つの点が目につく。
まずひとつめは、移動しやすいように取っ手が設けられていることだ。プロジェクトの発足から解散、事業年度ごとのセクションの構成変更などで、作業デスクが移動になることは多い。こういった年に一度あるかないかの移動のためでも、筐体に取っ手があるとないとでは作業のしやすさが違う。
もうひとつ、Z Workstationで特徴的なのはデザインだ。BMW Group DesignworksUSAと協調して設計されたデザインで、筐体を開く取っ手はまるで車の扉のようであり、開いた中身もエンジンルームのようだ。デザインの良し悪しは気分にも影響してくる。ワークステーション選定の際にはこうしたところも検討にいれておきたい。