毎年4月と10月のリリースを定期的に行っているUbuntuは、今年も例年どおり今月23日にUbuntu 9.04(開発コード名: Jaunty Jackalope)を公開する予定となっている。本稿では、それにあわせて3月26日にUbuntuリリースチームが公開したUbuntu 9.04 Betaのデスクトップ版をもとに新機能やインストール、使用感や既知の問題について簡単なレビューをしていこう。
主な新機能
去年の10月に公開されたUbuntu 8.10(開発コード名:Intrepid Ibex)ではモバイルに力を入れた開発が行われていたが、今回のJaunty Jackalopeでは様々な機能強化や細かな機能改良が行われている。具体的な機能強化や変更点を以下にあげる。
- Gnome 2.26の採用
- X.Org サーバ 1.6の採用
- Linux カーネル 2.6.28-11.37の採用
- ファイルシステム ext4のサポート
- 新しいスタイルの通知機能
- 起動パフォーマンスの向上
- OpenOffice 3.0.1の採用
Gnome 2.26
UbuntuではGnomeのアップデートにあわせてリリースを行っており、このベータ版からは3月19日に公開されたGnome 2.26が取り込まれた。Gnome 2.26では、マルチディスプレイ設定が追加されたほか、ライティングソフトウェアとして新たに"Brasero"が採用されており、これらの機能もUbuntuで利用できる。
BraseroについてはGnome 2.26が採用する以前からUbuntuで標準のライティングソフトウェアとして収録されてきたツールではあるが、今回Gnome 2.26の標準のライティングソフトウェアとして採用されたことでよりUbuntuとの親和性が高くなっている。
X.Org サーバ 1.6
Jaunty Jackalopeで使われているX Window SystemはX.Org 7.4であるが、X.Orgサーバに関しては2月25日に公開された最新の1.6が収録されている。X.Orgサーバ 1.6ではATIドライバに多くの改良が加えられており、R6XX/R7XXの2DグラフィックサポートやR5XXの3Dグラフィックサポートが利用可能となった。
ext4
Jaunty Jackalopeでは、標準のファイルシステムはext3を採用しつつ、ext4のサポートも行う形をとっている。これはUbuntu 9.10(開発コード名:Karmic Koala)よりext4を標準のファイルシステムとする予定であるためとしている。ただし、まだ議論している段階で確定というわけではないようだ。
起動パフォーマンス
起動パフォーマンスについてはLinux 2.6.28が採用されたために向上したと思われる。これはLinux 2.6.28カーネルより起動時間を短縮するための改良が数多く行われたため。試しに同じマシンにUbuntu 8.10とUbuntu 9.04をインストールして比較を行ってみた。
計測方法はgrubメニューからログイン画面が表示されるまでの時間を5回計測している。マシンによって起動時間は異なるであろうが、平均で7秒ほど早く起動する結果となった。また、CDブートの場合でも数回計測を行ってみたが、そちらでもやはり約5秒~8秒ほど早く起動する結果がでた。
通知システム
通知システムにも手が加えられており、Intrepid Ibexまで使われていた通知スタイルが廃止され新しい通知スタイルが採用されている。前リリースまではクリーム色を基調とした通知スタイルが使われていたが、今回より黒を基調とした通知スタイルに変わった。また、通知スタイルにフェイドイン/フェイドアウトといった視覚効果も追加されている。
通知スタイルについてはUbuntuの開発者であるMark Shuttleworth氏が自身のブログでも紹介しており、フラッシュ動画のデモが用意されているのでそちらをご覧いただきたい。
その他
他にはデスクトップアプリケーションとして、Intrepid Ibexのリリースでは見送られたOpenOffice 3.0が標準のオフィススィーツとして採用されるようになった。
なお、本誌ではレビューしていないがサーバ版では、新たにEucalyptusが採用されている。Eucalyptusはクラウドコンピューティングを実現するために開発されたオープンソースのインストラクチャだ。これはKarmic Koalaでクラウドコンピューティングへの対応を目指していることから採用されたようだ。