アナログIPコアももちろん存在

Chipideaの買収によって得たIPコアには、アナログと称するにふさわしいものも当然、存在する。レギュレータやアンプ、オシレータ、アナログデジタル変換回路、チューナ回路などである。以下に製品の例を示そう。

  • リニアレギュレータ
  • 基準電圧源と電圧監視回路
  • リアルタイムクロック
  • アナログデジタル変換(ADC)回路
  • デジタルアナログ変換(DAC)回路
  • 無線LAN用アナログフロントエンド
  • D級アンプ
  • ステレオオーディオコーデック
  • 衛星テレビ用チューナ
  • UWB(Ultra-Wide Band)トランシーバ
  • GPSレシーバ

これらのIPコア製品群を例えば携帯型情報通信機器(PDA、スマートフォン)に活用すれば、メモリコントローラや赤外線インタフェース、液晶コントローラなどを除くと、システムLSIを構成する大半の回路をMIPS Technologiesから調達できることになる。

携帯型情報通信機器(PDA、スマートフォン)用システムLSIの内部ブロックの例。緑色(白文字)のブロックはMIPS Technologiesが供給しているIPコア、緑色(黒文字)のブロックは今後、MIPS Technologiesが供給を予定しているIPコア(3月3日のインタビューにおける資料から抜粋)

ChipideaからMIPS Technologiesへと移行したIPコア製品群とシリコンファウンドリ。IPコアの開発拠点はポルトガルのリスボンとポルト、ポーランドのグダニスク、中国のマカオと蘇州にある。開発エンジニアの総数は260名(MIPS Technologiesの投資家向け資料から抜粋)

インタビューを終えて

シーザー・マーティン-ペレッツ氏へのインタビューでは、アナログ・ビジネス・グループの売上高に占める日本市場の割合を伺ったが、公表していないとのこと。IPコアに関しては世界市場の成長率に比べると日本市場の成長率は高いとみていること、日本市場の成長率と同じ程度にアナログ・ビジネス・グループの事業を日本で成長させたいと考えていること、などと述べていた。

惜しむらくは、日本のエンジニアにはこういった実像があまり理解されているように見えないことだ。3月3日のセミナーは定員50名に対し、記者が勘定した限りでは30名弱という参加者で、会場は空席が目立っていた。

セミナーを告知するWebサイトで繰り返されていた単語は"アナログ"だった。"アナログ"という抽象的なテーマ設定は、エンジニアの関心を遠ざけてしまう。そもそもエンジニアは多忙だし、業務と関連のあるテーマか、トピックスとして知っておくべきテーマでないと、足を運ばないし、上司の許可が降りないだろう。

参加者数については多ければ良いというものではないし、あまり関係のない参加者が増えても主催者としては困るかもしれない。それでも無料のセミナーで、会場が品川駅のすぐ近くという条件を考慮すると、出席者が30名弱というのは絶対数として少なすぎるのではないか。いささか残念である。

HDMIやMIPI、USB、UWB、GPSなどの具体的な単語や技術用語などを前面に押し出せば、今回のセミナーの参加者は、もう少し増えたのではないだろうか。バイス・プレジデント3名、ディレクター1名、マネジャー1名がわざわざ来日し、同社の将来の柱となるべき製品群を説明するセミナーなのだから、もっと多くのエンジニアに聴講して欲しかった。そして"MIPSコア"がCPUコアを意味しなくなる日が、早く到来することを願う。

MIPS Technologiesの顧客企業。プロセッサ・ビジネス・グループが約125社、アナログ・ビジネス・グループが約180社。日本企業のロゴマークがいくつか見える(3月3日のセミナーで撮影)