英国で昨年、広告ベースのMVNO(モバイルバーチャルネットワークオペレータ)であるBlykがサービスインし、業界から大きく注目されている。サービス開始から1年後、Blykは目標の2倍のユーザー数を獲得し、2009年にはオランダなど拡大戦略を計画している。
Blykはニッチながら、大きな成功を収めている。Blykユーザーの広告レスポンスレートは25%、これはオンラインの10倍にあたる。英国の「Net Adovocacy(他のユーザーに勧めたいかを示すスコア)」では、Facebook、YouTubeに次ぐレベルで、他のモバイルネットワークを上回っている。
フィンランドで立ち上がったBlykには、CEOをはじめ、Nokia出身者が多いが、重要な柱がメディア出身の共同設立者・Antti Ohrling氏だ。Blykの英国オフィスで、Ohrling氏にモバイル広告やBlykのビジネスについて話を聞いた。
--Blykについて教えてください。
広告と引き換えに携帯電話サービスを提供するオペレータ事業を展開しています。18歳から24歳までを対象とし、1日最大6通の広告を受け取ると、毎月43分/217通のSMSが無料となります。
2007年9月に英国でローンチし、加入者数 -- 我々はメンバー数といっていますが -- は、最初の6カ月で初年度目標である10万人に到達、開始1年で20万人を超えました。
これまで、100社以上のブランドがBlykと組んでキャンペーンを展開しました。
--どうしてBlykをはじめたのですか?
私は出版メディアの人間で、米国で広告エージェンシーを運営しています。
1998年にMobile Market Associationを共同で立ち上げるなど、前々からモバイル広告に注目してきました。ですが、モバイル広告業界はなかなか起爆しません。モバイル先進国の日本でも、それほどユーザーをひきつけていないと聞いています。
携帯電話は常に持ち歩くメディアなのに、どうして広告主は飛びつかないのかと考えました。新聞、ラジオ、TV、インターネットなどの既存メディアは広告による収益をオーディエンスと分け合っています。TVは無料、インターネットも無料です。でも、モバイル広告は、ユーザーからみるとメリットがありません。そこで、音声通話やSMSを無料にできないかと考え、長年付き合いのあるNokiaのPekka(BlykでCEOを務めるPekka Ala-Pietila氏、元Nokiaの社長)に相談しました。2005年ごろのことです。すると、いいアイデアだということになり、オペレータとして展開することになりました。2006年1月に最初のミーティングをヘルシンキで開き、Blykローンチに向けて準備をはじめました。
我々は市場を分析し、ブレインストーミングで綿密な計画を練りました。そこで、オーディエンスを若者に絞り、世界最大の若者向けメディアになることを目標に掲げました。我々は他のオペレータのように、広告を追加の収入とは思っていません。Blykはメディア企業だと思っています。
16 - 24歳をターゲットにしていますが、若者限定にした理由は、
- 無料に価値を見出す層である
- 広告主にしてみると、リーチできないが無視できない層である
の2つです。
モバイルはターゲットが明確なメディアですが、Blykの場合、広告主はさらにユーザー層を絞ったキャンペーンを展開できます。モバイルの特徴は、ユーザーの情報がわかるという点です。モバイルでできないこともあるが、モバイルしかできないこともたくさんあります。
マーケティング戦略は、口コミです。これまでの告知活動とえば、大学のキャンパスなどでビラを配ったぐらいで、新聞や雑誌などの既存メディアはいっさい利用していません。