AVCHD映像の対応と使用感
読み込んだデータは、ビン内でクリップとして表示され、シーケンスに貼り付けて編集を行えるのだが、今回AVCHDを始めとする各フォーマットにネイティブ対応したことにより、バックグラウンドで行っていたフォーマット変換の時間が大幅に減少している。AVCHDは読み込みしてから絵が出るまでに若干のタイムラグはあるが、タイムラインに貼り付けたら即再生可能という感覚で扱えるようになった。
ところで処理が重たいはずのAVCHDだが、筆者の使用しているCore2 Quad Q6600、メモリ2GB、Windows XP SP2の環境で、エフェクトをかけなければ普通に再生できる。タイトルやディゾルブなどを加えた場合、そのエフェクトが短時間なら、運がよいとそのまま再生し、時として秒間数コマのカクカクとした動きになるという具合だ。
そして外見上は地味だが、編集時にとても役立つ機能が追加されている点を紹介しておきたい。それはHDモードでの編集時に、DVベースながらモニタアウトができるようになったことである。PC用のディスプレイは必ずしも正しい色、有効領域を表示しているとは限らないため、編集時には映像の色味や明るさを正確に表示できるピクチャモニタに、実際の映像を表示しながら作業するのがプロの常識である。従来のCS3では、DVモードでの編集時には、IEEE1394からリアルタイムでDVの再生映像が出力できたので、カメラやVTRのD/A変換機能を通すことでこれが行えた。CS4ではHDVやAVCHDベースのHD編集時にも、シーケンスの再生設定でDVを選択できるようになり、ピクチャモニタによるプレビュー機能が使えるようになったのである。CS3はSD(DVやDVD映像)制作には使えたが、HD制作ではプロ用の用件を満たしていなかった。しかしCS4ではHD制作でプロも使える製品に近づいている。これが筆者の感想である。
外部モニタ用映像信号の出力設定。編集画面のシーケンスが選択されている状態で、「シーケンス」メニューから「シーケンス設定」を選択し、「再生設定」ボタンを押すと表示される。HDモードで編集中にも「外部デバイス」でDVを選択できるようになり、IEEE1394端子からDV映像としてモニタアウト可能となった。これをDVカメラ等でD/A変換すれば、編集中の映像を通常のピクチャモニタに映し出せる |
メタデータ対応とスピーチ検索機能
制作ワークフローの進化として顕著なのが、メタデータの活用だ。メタデータとは、例えばタイムコードやプロキシ映像など、映像に付随する補助データのことである。CS4では映像にクリップ単位でメタデータをXMPファイルとして付加でき、他のアプリケーションと共有できるようになった。そしてそのために、メタデータ専用の編集画面がワークスペースとして新たに用意されている。
このメタデータの活用で目を引くのが、新規に採用されたスピーチ検索機能だ。これは音声トラックに収録された会話を、CS4の人工知能が解析して、テキストデータに変換してくれるものである。変換後のテキストデータと映像のタイムコードデータがリンクしているため、映像を再生するとテキストデータのハイライト部分が付いてくるほか、逆に検索機能で単語を選ぶと、その位置の映像が頭出しされるという具合である。
メディアエンコーダの実行画面。テキスト起こしを実行すると、CS4に含まれるメディアエンコーダが起動し、この画面が表示される。目的のクリップを選択して「キューを実行」を押せばテキストへの変換が始まる。この作業には相応の時間がかかる |
これをテープ起こしに使えば、その分人件費が節約できるのでは、との期待が高まる。そこでいくつかの映像を選んで実験してみたところ、プロの話し手がアナウンサーブースのような整った環境で録音したものでは、多少の修正で使える状態となった。しかしBGMが入っていたり、屋外のノイズが混入している素材では、実用レベルには達しないことがわかった。英語だと比較的正確に変換できるようなので、日本語という特殊な環境には、まだしっかりと対応していないのかもしれない。今後のアップデートでよくなるものと期待したいところだ。
まとめ
Premiere Pro単体で見ると、バージョンアップのポイントは、基本部分でHDフォーマットへのネイティブ対応の拡大が行われたことであり、ユニークな新機能としてスピーチ検索機能が加わったというところだ。しかし他のCS4ソフトとのリンク機能が強化されており、ビデオ制作のワークフローが進化している面もある。次回以降はその点についてレポートしてみたい。