Amazon FPS、PayPal、Google Checkout――それぞれの違い
Amazon FPSのほかにも、米国ではPayPal、Google Checkoutなどいくつか同種のサービスが提供されている。米国のオンラインストアで買い物を行うと、カートのチェックアウト画面で「PayPal」「Google Checkout」といったアイコンを見かけることが多いが、これはオンラインストア側からの「決済方法を選択してください」という指示だ。ストアによっては自身の決済システムに加え、こうした複数の決済代行サービスが設定されていることも多い。事前にPayPalやGoogle Checkoutのアカウントを持っていれば、あとはアイコンをクリックして各サービスの認証ページにジャンプ、そこでIDとパスワードを入力するだけで支払いが完了する。新規ユーザーであれば、そこで住所やクレジットカード番号などを入力して個人情報を登録すればいい。ジャンプ先の認証ページは決済代行サービス業者のものであり、オンラインストアからは完全に独立しているため、ここでの入力情報が(住所など)必要最低限を除いてストア側に通知されることはない。
PayPalは2000年にはすでにサービスが開始されており、10年来の歴史を持つ(インターネット業界では)老舗のひとつだ。手数料の安さやその手軽さから「eBay」などのオンラインオークションで急速に利用が広まったこともあり、2002年にはeBayに買収されて子会社になっている。利用者の多さや歴史の長さからオンラインストアなどの事業者でPayPalをサポートしているケースが多く、クレジットカードを除けば、実質的に全米No.1の決済代行サービスとなっている。前述のオンラインオークションをはじめ、支払い方法にPayPalのみが指定されているケースも多い。現在では日本を含む世界各国でサービスを展開している。
一方のGoogle Checkoutは、2006年にスタートしたばかりのサービスだ(詳細レポートはこちら)。対応ストア数や一般への浸透度という点ではPayPalに及ばないものの、Googleアカウントをそのまま利用できたり、サービス事業者側がAdSenseなどと連動してマーケティングを展開できたりと、Googleの提供するサービスというメリットを最大限に活用している。
ではAmazon FPSはどうか。前述のように一般提供がスタートしたばかりであり、まだまだこれからというのが実情だ。だが潜在的に最も期待できるサービスであると、筆者は考えている。その理由は同社のクラウドサービスとの連動にある。AmazonではAWSとして「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」「Amazon Simple Storage Service(S3)」などのサービスを提供している。EC2はクラウド上でアプリケーションを動作させるサービスで、ここでE-Commerce向けのアプリケーションを動かせばそのままオンラインストアを開業できる。S3はオンラインストレージのサービスで、EC2で利用するデータをストアするために活用できる。AWSの各サービスは提供されるAPIで連携が可能で、FPSはこうしたAmazonのクラウドサービスと組み合わせが容易だ。PayPalやGoogle Checkoutでも決済代行システムを利用するためのAPIを公開しているが、FPSならではのメリットはここにあるといえる。
そして最も大きいのがAmazon.comのアカウントがそのまま利用できる点だ。ご存じのように、Amazon.comは世界最大級のオンラインストアであり、利用者も非常に多い。通常、決済代行システムの利用には新規アカウントの作成が必要になるが、Amazon.comのユーザーアカウントを持っているユーザーであればFPSの決済システムをそのまま利用できる。システム利用のハードルがひとつ減るわけで、後発ながらこれは大きなアドバンテージになる。