158年の歴史を誇る投資銀行リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)の破産が、アメリカ発の世界的金融危機を引き起こしたのは周知のとおりだ。これ以降、金融危機が連鎖し、世界中が広範な影響を受けているが、金融業界の重要な協力パートナーとして、中国のIT業界も当然その余波から逃れられない。本稿では、世界的な金融危機が、とりわけ中国の情報通信、コンテンツ関連業界に与える影響を考えてみたい。

リーマン破綻は中国ソフトウェア企業に大きな影響

リーマン・ブラザーズの経営破綻を契機に、市場の投資意欲は著しく鈍化した。米国で上場している中国のハイテク株もじかにその影響を受けている。リーマン・ブラザーズは少なからぬ中国のハイテク銘柄を所持していた。中でも旅行情報サイト「携程旅行網」を運営する携程の3.46%の株式と中国の大手検索エンジン企業の百度の1.7%の株式を所持し、この二社の十大法人株主の一つになっていた。

実際、マクロ情勢の影響で、2008年9月前半の米株式市場では、中国の四大ポータルサイトである捜狐、新浪網、網易網、騰訊を運営する各社の株価が軒並み十数パーセント下落した。ネットゲーム企業はややマシで、株価下落幅も10%以内にとどまったが、百度の株価が20%近く下落したほか、BtoBサイトを運営する阿里巴巴(アリババ)も30%近く下げた。

一方、米国で株式上場している中国のインターネット・ゲームサービスキャリア(SP)の受けた影響は比較的軽微だが、ソフトウェア、電子商取引、検索サービス企業などが受けた影響は相当大きいものとみられる。この理由として、ソフトウェア企業は、米国市場との関係が深く、電子商取引と検索サービス業はほとんど中小企業向けにサービスを提供しており、その中小企業の事業環境が今年に入ってから悪化し続けている、などの原因が挙げられる。

アナリストは「中国企業は次の発展を待つべき」

しかし、リーマン破綻しばらく後の米国の銘柄別動向を見てみると、米本土のハイテク銘柄に比べ、中国ハイテク企業銘柄、特にゲーム系の企業銘柄の下落幅は比較的小さかった。

実は中国のゲーム銘柄の大半は2000年のハイテク銘柄バブルでも生き残り、未然のリスク回避に長けた企業が多い。上海盛大網絡発展、上海巨人網絡科技、上海第九城市信息技術といった各社は、今回むしろ相次いで株式を買い戻しており、次のステップに向け、投資者の投資意欲をかき立てようとしている。

ウォール街の金融危機が中国のITやインターネットなどの産業へ波及するかどうかが目下最大の焦点だ。これに対し、中国のインターネットアナリストの呂伯望氏は、「米国の金融危機は中国のインターネット産業にある程度の影響を与える。投資機関とリスクファンドによる投資は鈍るだろう、それにより、多くのインターネット企業の融資ルートや成長速度に影響が出るため、上場企業の株価や時価にも影響が出るだろう」と分析している。

呂氏は同時に、「中国のインターネット企業、とくにベンチャー企業は着実に足元の業務をこなすことによってこの"寒い冬"を乗り越え、次なる発展のチャンスを待つべきだ」としている。