Adobe InDesign CS4にバージョンアップするべき?

実際のところ、Adobe InDesign CS4にアップグレードするより、Creative Suiteをバージョンアップするかしないかが焦点になるだろうが、触れば触るほど「Adobe InDesign CS4は便利だな~」という印象を受ける。前編で紹介したテキスト関連機能では紹介できなかった「相互参照」機能は「●●ページを見てください」といった語句が頻繁に登場するマニュアル制作に便利であり、他にも「欧文の泣き別れ」機能は賛否両論あるだろうが、画期的だ。さらに、リンクパレットに表示される情報はこれまで以上に強力なものとなり、一目見ればリンク画像の状態が確認できる。パワーズームも筆者の非力なMac Book環境でストレスなく動作した。

Adobe InDesign CS3までは、ハイフネーション処理を行って組版の体裁を整えていた。ハイフネーションの自動処理は希望通りの結果になることも少なかったため、「特殊記号の挿入」を使って任意ハイフンを入れていた人も多かっただろう

「欧文泣き別れ」機能

Adobe InDesign CS4に搭載された「欧文泣き別れ」機能は、行末に掛かる欧文をハイフネーション処理せず分割する。これはCJK言語がテキストに適用された場合のみに有効となる新機能だが、ハイフネーションルールを無視して泣き別れ処理することは残念だ

リンクパレット

リンクパレットは、表示される情報が大幅にアップした。リンク画像の状況(リンク切れや変更、埋め込み画像など)を示すアイコン表示や、これまではダブルクリックで表示されていなかったリンク情報もパレット内で確認できる(左図参照)。リンク情報の内容は、パネルオプションでカスタマイズできる。PSDファイルやAIファイル特有のレイヤーやEXIF情報など、かなり細かな部分まで確認できるので、必要な情報を漏らさず見ることができる(右図参照)

「相互参照」機能

同機能はマニュアル類を制作する場合に任意の段落スタイルやテキストアンカーを指定して反映する機能。相互参照を指定したい部分にマウスカーソルを置き、「書式/ハイパーリンクと相互参照」メニューから「相互参照を挿入」を開くと段落スタイルが適用されたテキストが表示されるので、参照させたいページや内容を含むものをリストから選べば相互参照設定の完了。一度相互参照が設定されるとページが移動しても参照先で自動的に内容が更新される。相互参照形式はユーザー自身が作成できるので、リファレンスガイドやマニュアル制作で間違いのないページや項目の指定が可能だ

「スプレッドビューの回転」機能

面付けの都合などで縦横の配置が混在したドキュメントを作成する場合に便利なのが「スプレッドビューの回転」機能。これは表示のみを回転するので、出力時に影響は与えない

「パワーズーム」機能

拡大表示したページ内で他の場所に移動する場合、これまではナビゲータパネルで任意の場所を指定するか、一度表示を全体表示に戻してあらためて範囲選択した後で表示を拡大するという手間の掛かる作業が必要だった。Adobe InDesign CS4に搭載された「パワーズーム」機能は拡大表示したまま手のひらツールに切り替え、マウスクリックを長押しすると自動的に全体表示に切り替わる機能。そのままクリックした状態で任意の場所に移動し、クリックを解除すると選択場所が元の拡大表示で確認できる

前回のAdobe Creative Suite 3で多数の新機能が搭載されているため、今回のバージョンアップは一見地味な機能の追加に見えるが、使い勝手や操作性、効率性は大きく進化している。CS2以前のユーザーであれば、確実にアプリケーションの使いやすさに瞠目するはずだ。発売から半年間は、アップグレードもCS1/CS2/CS3と同価格。このあたりも、CS4への移行を促すアドビ社の思惑が見えてくる。

さらに今回、Adobe Bridgeも操作性、スピードともに大きな進化を果たしている。トータルで見ても、Adobe Creative Suite 4へのバージョンアップは「アリ」だとお薦めしたい。 細かな作業性・効率性の機能アップは文章で伝えにくいのが残念なところ。ぜひ、体験版などを入手して新しいAdobe InDesign CS4を体感していただきたい。