NECは5日、光海底ケーブルの中継器の製造を行う山梨県大月市の日本電気山梨(山梨NEC)を報道機関に公開した。光海底ケーブル事業は、海外向け超小型マイクロ波通信システム「PASOLINK(パソリンク)」と並んで、通信キャリア向け事業としては同社の大きな柱となっている。なお大月市は、「C&C」(Computer & Communication)を提唱した、NECの元会長 小林宏治氏の出身地でもある。
世界シェアは20%
NEC ブロードバンドネットワーク事業本部 本部長 今井正道氏 |
海外との通信インフラである光海底ケーブル。10年前には衛星通信とシェアを分け合っていたが、現在ではそのほとんどを光海底ケーブルが占める。NECは、この事業で30年以上の実績を持ち、世界第3位、20%のシェアを持っている。アジア・太平洋地域に限っていえば、40%のシェアだ。「地域性が重要な事業であるので、今後もアジア太平洋地域にフォーカスした事業展開をしていきたい」と、ブロードバンドネットワーク事業本部 本部長の今井正道氏は語る。敷設海域が遠ければ、そこまでの輸送費がかさみ、コスト面で海外メーカーに勝てないためだ。
海底ケーブル事業は、世界第1位の米Tyco社、世界第2位の仏Alcatel社、3位NECの寡占市場で、この3社で世界の95%以上のシェアを持つという。
30年間故障はゼロ
NEC山梨社長の水戸郁夫氏 |
敷設船が1回の航海で敷設できるのは約3000キロ。日本とアメリカ(西海岸)とを結ぶ太平洋ケーブルの場合、伝送距離は12000-13000キロにもなる。したがって、行って戻ってを数回繰り返すことになる。したがって、敷設地域はコストに大きな影響を与える。もし故障があれば、その海域に行ってケーブルを引き上げて修理する必要があるが、NECがこの事業を開始して以来30年以上経つが、一度も故障は発生していないという。 NEC山梨社長の水戸郁夫氏は、これを支える海底機器の高信頼性技術として、「機密封止技術」「耐圧技術」「WDM試験技術」「環境(静電気対策、クリーンルーム)」の4つを挙げる。
光海底ケーブルシステムは、それぞれの対岸にある局舎、ケーブル、それと40-100kmごとに設置される中継器で構成される。そしてNECが担当するのは、全体のシステムインテグレーション、局舎にある端局の製造、および中継器の製造である。ケーブルは、子会社であるOCCから供給を受け、実際の敷設作業は外部委託である。そして、中継器の製造を行っているのがNEC山梨で、月産30台の能力を持つ。
伝送容量は10Tbps
海底ケーブルは、1980年くらいまでは、同軸ケーブルが主流だったが、現在はほとんどが光ファイバーである。ケーブルの耐用年数は25年以上あるが、実際そこまで使われることはないという。技術革新により年々伝送容量が拡大するため、古い設備に保守費用をかけるより、新しいケーブルを敷設するほうを通信キャリアが選択するためだ。
光海底ケーブル内には片方向8本、全部で16本の光ファイバーが収められており、1波長あたり10Gbpsの伝送容量がある。さらに、WDM技術によって1光ファイバーあたり128波長を同時に送信でき、1本の海底ケーブルで10.24Tbpsの伝送能力を有する(10Gbps×128(波長)×8(ファイバー))。そして、2011には、ファイバー1本あたりの伝送能力が40Gbps×96に拡張される予定だ。