地球の不規則な自転が、うるう秒を生む
先ほどの説明を整理すると、うるう秒には「原子時」と「天文時」というものが深く関係しており、両者の差が0.9秒以上になりそうなときに調整役として登場するということになる。では、原子時、天文時とは何なのか? また、なぜその差が不規則に変わるのか? そこを説明しよう。
時刻は、大きく分けて2種類存在する。地球の回転時間を基に決められる天文時と、セシウム原子が出す電磁波を基にした原子時である。
1958年までは天文時が採用されていたが、「地球の動きが不規則であることがわかり、科学技術の高精度化に対応できないという理由から、同年より原子時に変更された」(小山氏)という。
1958年を境に天文時から原子時に変更された |
ポイントは、"地球の動きが不規則"という点だ。天文時は、天体の観測によって求められた1日の長さから算出されるが、「地球の表面にある大気や水、地球内部のマントルなどの影響により、地球の自転速度が変化する」(小山氏)ため、その長さは不規則に変化するという。現在は次第に長くなる傾向にあり、1世紀平均で1日0.001~0.0015秒ずつ伸びている。
それに対し、原子時は、数十万年に1秒の誤差という高精度で規則正しく時を刻む。そのため、天文時と原子時の間には差異が生まれてしまう。放っておけば、時刻がおてんとうさまの高さと合わなくなり、極端な話をすれば太陽が昇り始める時刻が13時頃になるという事態になりかねないわけだ。そこで、両者の差異を埋めるためにとられる措置が、うるう秒である。
地球の自転速度の変化は現在のところ予測がつかず、観測しながら結果を見て調整するしか方法がない。そのため、半年前に決めるという、不定期かつ急な対応になってしまうのである。
なお、先ほどの説明に登場した協定世界時(UTC)とは、現在の標準時を刻む原子時を指す。運用が始まった当初から無調整の原子時「国際原子時(TAI)」にこれまで適用してきたうるう秒を反映させた時刻で、2009年1月1日の挿入後は「TAI+34秒」になる。
また、UT1は、大きく分けて3種類存在する天文時のひとつ。「極運動」の影響などを考慮して算出され、現在標準的な天文時として利用されている。