イタリアでの発電所建設に合意
日本にも欧州にも油田は基本的に存在しないが、濱野氏は太陽電池が「油田の代替となる。しかも地域にこだわらず、各国の政策にもリンクすることができる」とし、21世紀の油田と表現する。
同社では、原材料の製造から、プラズマCVDを中心とした製造装置の自製化、セル/モジュールの製造のほか、大規模プラントの建設、メンテナンスのノウハウを蓄積しており、こうしたノウハウをトータルソリューションとして提供していくことを検討してきた。
すでに2008年5月にイタリアの電力会社Enelと太陽光発電事業で協業を行う基本合意を取り交わしており、今回、さらに一歩踏み込み、独立発電事業(IPP:Independent Power Producer)を行う合弁会社を2009年春に設立し、2012年末までに合計189MWを発電可能な太陽光発電所を展開することを決定した。
総投資額は2009年~2012年の4年間で約1,000億円を想定。プラントは「主に南イタリアを中心に建設することを考えているが、欧州のそのほかのメーカーからもオファーが来ており、地中海沿岸部への進出も目指す」(同)という。
1GWクラスの工場を海外でも展開
さらに、トータルソリューションカンパニーを目指す方針を打ち出し、シャープ、Enelに欧州の"生産会社"を加えた3社で薄膜太陽電池生産工場をイタリアに建設する方向で話し合いを進めていることも明らかにした。これは発電所と同等、Enelと2社で進めてきた計画にもう1社が参加したもの。
具体的には2008年12月中に合意文書を締結する予定としており、「2020年までに20GWの発電施設を整備する目標を掲げた(2008年7月の43カ国が参加した地中海連合首脳会議で採択された)"地中海ソーラー計画"を視野に入れて取り組みを進めていく」(同)とする。なお、3社目の生産会社については、「何を生産しているのかについては、今は明らかにできない」(同)とのことである。
ちなみに、この地中海連合は、EU加盟国が27カ国、EU非加盟の欧州16カ国に中東・アフリカ諸国を加えたもので、長期的な目標として、サハラ砂漠に2050年までに合計100GWの発電設備を建設し、北アフリカ一帯と欧州各国に張り巡らせた大容量送電線により送受電を行う構想などを打ち出している。
イタリアに建設される薄膜太陽電池生産工場は、「堺工場をコピーイグザクト(Copy Exact)により展開する」(同)としており、工場規模は堺工場と同様の1GW/年を最大とし、480MW/年での稼働を計画している。
ただし「シャープはあくまでマイノリティであり、主たる事業主からロイヤリティを受け取って収益を上げていくビジネスを展開する」(同)とし、積極的に海外でのこうした形の工場の展開を推し進めていくとした。