社員の意識向上に果たした環境経営マネジメント
プリマジを使うことにより、業務の流れは導入以前と一変している。ITにより業務は効率化されミスは激減、環境活動にも大きく貢献している。結果としてCO2削減は目標としていた数値よりも遙かに高い12.6%の削減に成功、電力使用量は11%の削減を実現している。排水量にいたっては5%削減の目標に対して22%もの削減を果たしている。この取り組みは関係省庁に高く評価され、数々の賞に輝くなど大きな功績を残しているのは冒頭で紹介したとおりだ。
しかし、この環境経営マネジメントを通して一番効果があったのは、社員ひとりひとりのスキルアップや経営へ参加している意識が高まったことなのだという。「IT化するというのは、どうしても冷たいイメージがあります。しかし、私の考えはその逆です。情報を処理し、数値化するといったものは機械が得意とするところです。そういった処理はすべて機械にやらせ、人間はビジネスとしてもっと上位にあることをすべきだと考えています。例えば工場においては印刷技術を磨くといったことや、営業職ならお客様からニーズを聞き出したり、リレーションを良くしたり、顧客満足度を上げることに力を入れてほしいのです」杉井氏は語る。その言葉には中小企業におけるビジネスのヒントが隠されているように感じる。
ブランディングすることにより企業を活性化
ディグが取り組んでいる環境経営マネジメントは、中小企業のブランディング化という目標もあるのだという。環境活動に取り組み、それが評価されれば中小企業でもメディア媒体に取り上げられる。「ディグに来る前には東京電力に在籍していましたが、東京電力と他の人に言えば、すぐに電気を供給している企業だと分かってもらえますが、"ディグ"という名前だけではなかなか分かってもらえません」と杉井氏は語る。
環境経営マネジメントにおける中小企業ブランディングの効果は高く、実際にディグの活動は新聞やITメディアなどを中心にあらゆる分野で取り上げられた。環境アナリスト、学生といった人々も成功事例としてのディグを頻繁に訪れるという。「こうした方々が弊社の取り組みを見学に来てくれるのは、大変ありがたいことです。社員も"自分は人に見られている職業である"という気運が高まり、リテラシーが向上しています」と杉井氏は語る。
今後はさらなる行動として、カミネットからの要請で、紙流通におけるEDIに取り組む予定もある。「理想としては見積もりを行う段階からWebブラウザを通して操作し、運送中の位置情報なども把握できるシステムを構築したいと思っています。バーコードシステムと連携させて運送後の倉庫管理などもスムーズに行えると、ますます便利ですね」と杉井氏は展望を語る。
また、EUでは義務づけられているカーボンフットプリントも日本の印刷業に普及すると見込んでいる。「出版社様もCSR的な観点から自分たちの印刷物にカーボンフットプリントを記載する動きが、今後活性化していくと思います。そこで、必要となるのが印刷工程で排出されるCO2です。紙を使いますから80%はそこで排出されますが、残りの20%は印刷機を動かす動力、すなわち電力消費によって排出されるものです。今後は私が持っている前職の知識を活かして印刷機が稼働するときの電力使用量を測定し、受注段階からCO2の発生をあらかじめアルゴリズムとして把握できるようにしたいと思っています。さらにもう一歩進んで、印刷業界が排出するCO2の発生量を少なくできる提案をしたいですね」と抱負を語る。
ディグの社員全員参加によって果たした環境経営マネジメントは今後も続いていく。さらに将来へ向けて目標を持ち続けるディグ。彼らの取り組みは中小企業の明るい未来を切り開いていくものとなるだろう。