パソコンと数種類のソフトウェア、それにわずか数万円の投資で大きなIT化を遂げ、さらに環境活動にも貢献している企業がある。ディグが提唱した「環境経営マネジメント」とはどういうものなのか? 同社の代表取締役 杉井康之氏に直接話を伺った。
環境大臣賞やIT経営百選の優秀賞を受賞
ディグは、大正10年創業の老舗の印刷企業だ。平成20年、4代目の社長として就任した杉井康之氏は、東京電力でITを活用した新規事業を企画した経緯を持っており、ディグに入社したときから環境活動への取り組みとIT化を推進してきた。その活動は実を結び、平成17年には「エコアクション21環境活動レポート2005」にまとめられ、「第10回環境コミュニケーション大賞」の「環境活動レポート部門 大賞(環境大臣賞)」に選ばれている。
また、ITの分野においても同社の取り組みは経済産業省の「IT経営百選」にノミネートされ、平成16年には「活用賞」、さらに平成18年には「優秀賞」に輝いている。
環境活動には社員全員が取り組む
環境活動と経営マネジメント、この課題には多くの企業が取り組んでいるが、実際には環境と経営は相対するもので、環境活動にはコストがかかってしまい経営を圧迫すると捉えられることが多い。それに対して杉井氏は「私どもの考えでは、環境に取り組むことでPDCAサイクルを学び、それを経営に活かしていくことを"環境経営マネジメント"と呼んでいます」と語る。
ディグの環境活動は2005年からスタートした。「印刷業はインクや現像液、紙も大量に消費するので環境負荷の大きな業種といえます。先代の社長もかなり以前から環境について提唱されていましたが、2005年に私がディグに加わり、そのときから実際に取りかかり始めました」と杉井氏。企業ではこうした取り組みはISO14000などの取得に向けて行動を始めるが、中小企業では規模的に難しい部分もある。そこで同社では、環境省の「エコアクション21」の取得に向けて取り組みを始めたのだという。 「弊社は千葉県の松戸市に印刷工場を持っています。通常、企業が環境活動に取り組む場合、工場のみに絞られるケースがありますが、弊社では本社の社員も含め全員参加とすることにしました」と杉井氏は語る。
「具体的な数値の目標として、CO2の削減においては前年度比マイナス7.7%としました。電力使用量の6%削減とプラスティックの回収で1.7%、それに加え総排水量においては5%削減という目標も設定しました」と杉井氏。この数値をクリアするためには、もっとも環境負荷物資の出る工場内外の環境負荷調査とデータ化、リサイクル、廃棄物のルート整備などのほか、エネルギー経費削減によるコスト意識の徹底や、印刷ミスを防止するための全作業の一元管理などを行う必要がある。
45歳以下はエレベーターを使わず階段で
まずディグが取り組んだ環境活動は電力使用量の削減だ。データ取得のために本社のエレベーターの動作回数を取得するカウンターを取り付け、45歳以下の社員は上りエレベーター利用を制限。エレベーター利用は、以前は月およそ1万1520回(24営業日換算)だったが、これを1万400回に減らし、年間トータル1万4000回程度の使用にとどめることで電力使用量を削減している。削減量は1回の動作で5whと小さいが、省エネルギー意識の高揚といった部分で大きく貢献する。
社内で使用する照明においても点灯スイッチと連動するゾーニングも実施、社員がいないゾーンの照明を積極的に消灯している。また、空調温度は冷房時28度、暖房時21度に設定するなど積極的な省エネ活動を行っている。そして、省エネ意識徹底のため、社員がひとりずつ持ち回りで各所の点検作業も行う。「最近では私が消し忘れたゾーンを社員が発見し注意されるシーンも出てきました」と杉井氏は明るく語る。