上位品種にない機能を搭載

注目すべきは、上位品種のデジタル・オシロにない新機能「FilterVu(フィルタビュー)」がMSO/DPO2000シリーズに付加されたことだ。同機能は、カットオフ周波数が可変のフィルタとピーク検出を同時に実行する機能で、原信号波形の雑音部分の波形と雑音を除去した本来の信号波形の両方を輝度の違いによって切り分けて表示する。この機能は、テクトロニクスが今後発売するデジタル・オシロには、標準的に搭載されるとみられる。

新製品発表会では「FilterVu」の機能を実際に示していた。これは原信号波形。8ビットD/A変換器の出力である

「FilterVu」によって本来の信号波形と雑音信号を切り分けて表示したところ。輝度の低い部分が雑音信号である。カットオフ周波数は5.50kHz

またオプションで、シリアル・バスとパラレル・バスの解析機能を搭載できる。シリアル・バスの解析機能はMSO/DPO2000シリーズ共通である。CAN/LINバスのトリガ/解析オプション「DPO2AUTO」と、I2C/SPIバスのトリガ/解析オプション「DPO2EMBD」を用意した。オプションの価格(税抜)はいずれも9万400円。

なお、パラレル・バスの解析機能はMSO2000シリーズだけのオプションで、RS232/RS422/RS485/UARTバスのトリガ/解析オプション「DPO2COMP」がある。価格(税抜)は9万400円。

新製品発表会ではシリアル・バスの解析機能を実演してみせた。I2Cバスの信号を取り込んで解析したところ。上部の細長い画面が原信号波形。この写真では少し分かりにくいが、論理レベル「高(ハイ)」が緑色、論理レベル「低(ロー)」が青色で表示されている。中央の画面が一部を50倍に拡大した信号波形。その下がデコード後の表示。50番アドレスのデータで、最初の値が14、次の値が16であると分かる

ローエンドから1つ上の性能へ

日本テクトロニクスの営業統括本部でパートナー営業統括部統括部長兼特約店営業部部長を務める高原澄雄氏

新製品発表会ではこのほか、日本テクトロニクスの営業統括本部でパートナー営業統括部統括部長兼特約店営業部部長を務める高原澄雄氏が、MSO/DPO2000シリーズと過去の製品群との関わりを述べていた。

同社はローエンド(エントリ)・モデルのデジタル・オシロ「TDS2000/TDS1000シリーズ」を以前から販売している。このシリーズのユーザーでより高い性能を求める層が、MSO/DPO2000シリーズのターゲットだとする。また上位品種の「MSO/DPO4000シリーズ」ではオーバースペックであり、価格が購入予算を超えてしまうユーザーに、要求仕様に応じてDPO3000シリーズやMSO/DPO2000シリーズなどを推奨していくという。

ローエンド(エントリ)・モデルのデジタル・オシロ「TDS2000/TDS1000シリーズ」からMSO/DPO2000シリーズへの移行パス

ミッドレンジ・モデルのオシロ「MSO/DPO4000シリーズ」からMSO/DPO2000シリーズへの移行パス

なお既存のエントリ・モデルであるTDS2000シリーズの基本仕様は、最大サンプリング速度が2Gサンプル/秒および1Gサンプル/秒、周波数帯域が200MHz/100MHz/60MHz、アナログ入力数4/2チャンネル、波形メモリが2500ポイントである。本体価格(税抜)は31万3,000円~16万8,000円であり、TDS2000シリーズのハイエンド品(200MHz、4チャンネル)でもDPO2000シリーズのローエンド品(100MHz、2チャンネル、33万5,000円)より安い。

より具体的に比較すると、200MHz帯域の4チャンネル入力という条件ではTDS2000シリーズが31万3,000円、DPO2000シリーズが48万5,000円となる。差額は17万2,000円とかなり大きい。

ここから読み取れるのは、DPO2000シリーズはTDS2000シリーズの置き換えではない、ということだ。DPO2000シリーズは波形メモリや操作性、解析機能などの点ではTDS2000シリーズを凌駕する。DPO2000シリーズはDPO3000シリーズの下位品種であり、TDS2000シリーズの上位品種という位置付けになるのだろう。