HTML 5の正式リリースは2022年!?

また、W3Cによって勧告化された標準仕様への準拠を確認するためのテストケース「Acid2」「Acid3」についても言及。HTMLやCSSに重きが置かれたテストケースで各Webブラウザが合格済みのAcid2にWindows Internet Explorer(IE)の次期バージョンIE 8が合格したことを紹介したうえで、今年3月にECMAScript(JavaScript)やDOM 2の標準準拠を確認する「Acid3」がリリースされたことを説明し、OperaとWebKitが先を争ってAcid3準拠を進めていることを明かした(※)。

※ Opera、WebKitともに未公開の開発中のものが合格したことは発表済み。

Acid2をパスしたブラウザで表示されるイラスト。このイラストが正常に描画できればHTMLやCSSの標準に準拠していることになる

Acid3をパスしたブラウザで表示される画面。Acid3はECMAScript(JavaScript)やDOM 2が中心のテストケース

なお、Acid3の実装の大半を担当したのは、米GoogleのIan Hickson氏である。Hickson氏は、次期HTML仕様「HTML 5」の策定もEditorという立場から進めている人物。Meyer氏は、そのHickson氏の言葉を引用し、「HTML 5が正式にリリースされるのは2022年になるだろう」とコメントしたうえで、「ただし、同様の機能が実現されるのはもっと早いはず」と説明し、HTML 5の基となった仕様Canvasに各Webブラウザが対応していることなどを紹介した。

重要視されるJavaScriptエンジンのパフォーマンス

続いて、Meyer氏は、現代のWebブラウザにおけるJavaScriptエンジンの重要性を説いた。

例として、IE 7が「IE7.js」というライブラリによってHTML/CSSの標準仕様に準拠した事例を紹介。「WebブラウザにおけるJavaScriptエンジンの責務が大きくなってきた」と説明し、「今後はそのパフォーマンスが重要になる」とコメントした。

こうした動きを背景に、次期WebKitのJavaScriptエンジン「squirrelfish」は約10倍のパフォーマンス改善を実現。さらに、次期Firefoxに搭載予定のJavaScriptエンジン「TraceMonkey」は22.5倍ものパフォーマンス向上を果たしているという。Meyer氏は、こうしたトピックスを取り上げ、これらのエンジンが重責を担っていくとの見解を示した。

注目のJavaScriptアプリ/ライブラリ

Meyer氏は、以上のような時勢における注目のJavaScriptライブラリ/アプリケーションとして次の4つを挙げる。

  • Typeface.js: Webページに外部フォントを取り込むJavaScriptライブラリ

  • Bluff: 棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなど、さまざまなグラフを生成するライブラリ。テーブルデータから生成することも可能

  • Raphael: JavaScriptでベクター画像を描画するためのライブラリ。マウス操作に応じて動作させることもできる

  • 280 Slides: Mac OS Xの「Keynote」のようなプレゼンテーションアプリケーション。Objective-JというObjective-Cベースの言語で開発されている

  • processing.js: 画像処理やアニメーション向けのプログラミング言語「Processing」をJavaScriptで実装したライブラリ

これらを紹介した後、「IE7.jsの例も含め、Webブラウザの機能をJavaScriptで拡張するのがトレンド」と説明。「以前は考えられなかったことだが、JavaScriptエンジンが高速化したことで、こうした進化が可能になった」とまとめた。