完全に独学でCGを学ぶ

小坂一順
1975年生まれ。法政大学を卒業後、映像編集などを行うオムニバス・ジャパンに入社。CMや映画などの映像編集を経て、2005年より、VFXスーパーバイザーとしてTV番組「牙狼〈GARO〉」(2005~2006年)などを手掛けた。近年では、映画「陰日向に咲く」(2008年)や、「デトロイト・メタル・シティ」(2008年)などの作品に携わり、現在公開中の映画「ハンサム★スーツ」にもVFXスーパーバイザーとして参加している

ここ数年の映画には欠かせない技術となっているVFX(視覚効果)。このVFXを効果的に活用し、映画をさらに魅力的に輝かせることに尽力しているのがVFXスーパーバイザーという職業。このVFXスーパーバイザーについて、クリエイター・小坂一順氏に話を聞いた。小坂氏は現在公開中のコメディー映画『ハンサム★スーツ』でも、その才能を遺憾なく発揮している人物だ。

――いろんな映画で特撮が使われていますが、VFXスーパーバイザーというお仕事は、具体的にどんな職業なのですか?

小坂一順(以下、小坂)「簡単に日本語に直すと視覚効果監督ですね。CG、VFX、合成の監督という位置付けになります。立場的にはCG、VFXで映画監督をサポートする仕事です。監督中心に、カメラマン、照明さん、美術さんがいますが、そういう方々をサポートしたり、アドバイスしたりしながら撮影を円滑に進めるというのがひとつ。あとは、仕上げというか実際のCGを制作する上で、そのスタッフに指示して監督する。映画監督から演出の意図を聞き、自分の中で翻訳というか、変換をしてそれをスタッフに伝えるのと、技術的な部分でのアドバイスをする。このふたつですね」

――小坂さんは、どういうきっかけで、この仕事に就いたのですか?

小坂「元々、大学でビデオの自主制作をしていて、そこで映像を作る楽しさ、喜びみたいなものを学んだんです。僕は法政大学の社会学部にいる普通の文系の学生で、当時は、専門学校もあまりなく、門戸は開かれた感じではなかったんですが、いくつかCG制作会社を受けたんです。その中で、今所属しているオムニバス・ジャパンが比較的未経験者で文系の学生でもOKだったので入ることになったんです」

――業界に入られる前の小坂さんは、独学でCGを学ばれたのですか?

小坂「完全に独学ですね。ほんとに学校も数が限られていましたし、入るにはそれなりのお金もかかるのですが、そんなお金もなかったので。3DCGソフトの「LightWave」を買うお金だけあったので、それを購入して、もう後は完全に独学。マニュアルだけ読んで勉強するような形で……」

――入社されてからは、どうでしたか?

小坂「そうですね。入ってからが大変でした。やっぱり仕事しながら勉強していくということで……。最初、僕は編集の仕事、CMの編集アシスタントとして入社したんです。僕が入った頃から『ノンリニア編集』と言って、もうすべてコンピュータで編集する・合成するというシステムになっていて、アシスタントをしながら勉強していくという感じでした」

ハンサム★スーツ

33歳独身の主人公、大木琢郎(塚地武雅)。定食屋を営み、料理の腕前も良く、人柄も良い彼のウィークポイントは顔がブサイクであること。そんな彼が定食屋の新人アルバイト、寛子(北川景子)に恋をする。1度は恋に破れたが、ひょんなことから手に入れたハンサムスーツによって、スーパーモデル・光山杏仁(谷原章介)に変身した彼の人生は一変するのだが……
(C)2008『ハンサム★スーツ』製作委員会