「物語に合うフォーマットを見つけて形にするのが僕のスタイル」

――青池監督の作品を観させていただくと、どの作品もテイストがかなり違いますよね。どういう体制で制作されているのですか?

青池「基本的には今でもひとりで作業してるんですが、手が回らないときは、作品ごとに『これ手伝って』みたいな感じで、他の人の力も借りています」

――そのときには、適材適所みたいな、プロデューサー的な視点が入っているのですか?

青池「そうですね。それもありますが、作風の話でいうと僕はアニメーションのバックボーンがゼロなので、何でもいいんですよ。正直、僕は絵が描けないんです。絵を描くのが凄く苦手なので、今回の『ペレストロイカ』のように、絵を描かない作品が大好きなんです(笑)」

――『ペレストロイカ』では、実写背景とFlashの実写人形データを組み合わせて、まるでクレイアニメのような映像となっていますね。

青池「本当によく『結局、君のスタイルはどれなの?』と言われるんですが、お話を作って、それに合うフォーマットを見つけて形にするというのが僕のスタイルなんです」

――いい意味でスタイルがないという感じですよね。

青池「どのスタイルも一度は試してみたいという気持ちがあります。作品のアイディアに対して『いや、僕はこの絵しか描けないから、少女マンガ的な話はできない』なんて言ってたらつまらないですし」

――『ペレストロイカ』は、どういう経緯で今回のようなスタイルになったのですか?

青池「デジタルアニメーションをやっていると、もともとデジタルの人間ではないので、凄くフラストレーションがたまってくるんですよ。"毎日、毎日、パソコンに向かってアホじゃないか?"とか。そんなときに『ウォレスとグルミット』を観て"これ作ってみよう"って(笑)。すぐに近所のおもちゃ屋で粘土を買ってきて、顔を作って、"これが動けばいいんだろう"という感じで写真を撮り、目と鼻をつけて、"クレイアニメを作ろう"と。でも、『ウォレスとグルミット』のスタッフの最新作は1作を7年かけて250人のスタッフで制作したと聞いたんですね(笑)。これを僕ひとりで二週間で作れるとこまで落とし込もうと…」

――コマ撮りの代わりにFlashで人形を動かしたんですね。

青池「実は人形は1体しか作ってないんです(※登場主役キャラクターは3人)。人形の動きも横回転だけで、色んな角度から撮影して、口の形のデータを16種類作り、表情を出しました。そのデータをストックして、キャラクターごとにメガネや身体を描いたりして、違いを出したんです」

人形は1体だけしか制作されていないという
(c)2005 PERESTROIKA ALL RIGHT RESERVED.

ミニチュアの背景の作り込みがとにかく凄い
(c)2005 PERESTROIKA ALL RIGHT RESERVED.

――あのドールハウスのような精巧な背景の作り込みは?

青池「あれは、うちの奥さんと友達が燃えちゃって(笑)。『頑張って背景作り込んで』と頼みました。『その間、僕はパソコンで作業してるから』って言って(笑)」

――延べ、どれくらいの期間でこの作品を完成されたんですか?

青池「モデルと背景の製作が9ヶ月ですね。デジタル関係の下準備はちょっと覚えてないんですけど、実際の映像作りにはいってからは、ひとつのエピソードで、2週間ですね」

――内容的には、古典的というか、正統派ギャグという印象を受けたんですど、脚本作りはどのように進められたのですか?

青池「当初は12エピソード作ろうと思っていました。24本くらい脚本を書いて、それを日本とカナダの知り合い40人くらいに送ってアンケートをとったんです。最初から、映画祭への出品を考えていたので、国限定の笑いは避けて、万国共通の笑いを目指そうという意図がありました。ただ、ロシアといえば腹ペコみたいな、ちょっと貧しさを感じさせるようなイメージが世界でも通じたというか……。ロシア人からはかなり怒られそうで、申し訳ないんですけど」

――『ペレストロイカ』をどう楽しんでほしいですか?

青池「本当に手づくりの作品ですから、モノを作りたい人には、『コツコツやれば、こんなこともできるんだ』っていう風には見て欲しいし、もちろんモノを作らない人にも手作りの楽しさを感じてほしいと思います。落語をアレンジしたエピソードもあるので、そういう部分を、外国風テイストにしてどんどん海外の人に紹介していきたい。日本にこういう面白いお話もあるのかなと思ってもらえれば、嬉しいですし」