NGNが実現する世界はどのようなものか -- 和田氏は、遠隔からのヘルスケアサービス、公共サービスへのアクセス、企業分野としてSaaS、在宅勤務、TV会議、家庭ではホームセキュリティ、IPTV、デジタルサイネージ(電子看板)などを紹介した。

和田氏はスピーチ後のディスカッションで、モデレータのAlex Vieux氏(米Red Herring会長兼CEO)に対し、「通信を媒介して収益を上げるというこれまでのモデルに成長性はない」と語る。今後は、「社会問題を解決することで収益を上げていく」と和田氏。具体的には、エネルギー、環境、高齢化社会などの社会問題となる。

テレコム市場は激動の時代にあり、日本におけるNTTのような旧国営テレコムの多くが民営化の道を歩んでいる。

他国の旧国営テレコム企業と比較して、和田氏は次のように語った。「米国のような分割モデル、フランス/ドイツなどの分割なしモデルの2つに大別できるが、われわれはフルメニューの事業会社を持つ持ち株会社で、分割/分割なしの中間にある。メリットは、各事業者が自律的に事業展開できること、コーポレートガバナンスの透明性。デメリットはグループとしての意思決定のスピードに欠けること」

では、NTTは転換できるのか? これについて、和田氏は転換の度合いは「90%」と述べる。経営陣は激しい競争にさらされており、民営化後に入社した社員がすでに中堅社員として活躍している。この間の一部の社員が旧体質を引きずっており、比率にして10%というのが、その根拠だ。

NGN構想については、数年前には多くの投資家から「クレイジーだ」といわれたという。和田氏は、「技術的に可能で、顧客の需要があるものは、現実のものとなる」と哲学を語る。光ファイバでもこれが当てはまる。光ファイバへの移行は世界的に起こりつつあり、「クレイジーではなくなった」と和田氏は言う。

和田氏は最後に、キャリアからサービスを作り出す企業への転換に向け、「第一歩を踏み出した」と強調した。