インターネットと「オープンな世界」
2008年の推計で日本のブロードバンド世帯普及率は約6割に達し、これを背景にコンテンツ配信事業が拡大を見せ、過去5年間で約8倍にまで成長しているという。これまでインターネットのビジネスと言えば広告市場ばかりが取り上げられてきたが、ここにおいてコンテンツを持つ事業者が参入する環境ができてきたと言える。
なぜこの速さで市場の成長が進んでいるのか、井上氏は「その答えは"オープン"に帰結するのではないか」と言う。かつてパソコン通信の時代にはそれぞれの会社が専用サービスを会員向けに提供し、閉鎖されたマーケットの中でサービスの差別化を図る状態だった。一方でインターネットはどこの接続事業者と契約してもインターネット上の全てを使えることが普及の大きな要因であり、これによりマーケットも拡大していったと考えられる。
このことを例に、井上氏は似たような構図が携帯電話市場にもあてはまるとした。携帯電話のインターネット接続サービス契約率は2007年に87.2%に達しており、3G機種の普及も2006年の52.6%から2007年は72.3%へと急速に普及が進んでいる。このように利用環境が整う中で、これまでの携帯向けインターネットは各キャリアの"公式サイト"の名のもと十分にオープンとはいえない状態だった。だが、昨年各キャリアポータルに検索窓が出そろい、オープンな世界に近付いたことにより、井上氏は「ユーザーも増え、大きな市場ができてくるのではないかと期待している」という。
これに対してテレビのインターネット対応は「まだ始まったばかり」。しかし、昨年のCEATECからこれまでに国内主要メーカー全てがインターネット対応機種を発売した。テレビをネットに繋ぐ考えそのものがまだ浸透してないことから、実際の普及に至るにはまだ障害があるとしながらも、井上氏は「2008年は日本のテレビインターネット元年と言えるのではないか」と期待しているという。また、テレビ向けのインターネットでも同様に「オープン」な状況を作っていくことが重要であると述べた。
インターネットはこのように大きな情報の塊として拡大していくが、一方で「インタフェースは徹底的に変わっていくべき」だという。PCならキーボードやマウスを使った検索・メールやゲーム、携帯なら着メロやGPS機能を活かした検索が利用されるように、テレビなら大きな画面やリモコンのボタン操作など、それぞれの特性に合わせたサービスをつくっていくことが求められる。