コンテンツ配信も"次の事業"の柱に


田邉社長は「"次の事業"の柱としてコンテンツ配信も考えている」と語る

――コンテンツ配信関連ビジネスには今後も力を入れていかれるのでしょうか?

垂直統合型でインターネット接続事業までやっていることもあり、顧客の満足度向上という目的のためにも、コンテンツ配信事業は絶対に力を入れてやっていかなければならないと思っています。将来的にはテレビ向けのVODサービスなども行っていきたいと考えています。

当社は、「ネット(eo光ネット)」「電話(eo光電話)」「テレビ(eo光テレビ)」のいわゆるトリプルプレイサービスを展開していますが、インターネット接続事業であるeo光ネットに申し込む契約者数は、右肩あがりに年間約16万件のペースで増加しています。この中で、電話サービスに申し込むのが8割、テレビサービスを申し込むのが4割という状況です。

ですが、この状況はそう長くは続かず、個人的には、地上アナログ放送が停波し、地上デジタル放送に完全移行する2011年がピークになるとみています。それ以降は、減りはしないものの、増加スピードは緩やかになっていくことが予想されます。

その時でも右肩上がりの経営を維持するためにはどうすればいいか? モチベーションの問題も含めて、次に何をやっていくべきかを考える必要が今こそあると考えています。

――具体的には、どのようなことをなさっているのでしょうか?

次にやるべきことを考えるためのプロジェクトチームを社内につくり、検討に着手しはじめました。検討課題の一つの柱として、コンテンツ配信事業も考えていきます。

現在の仕組みでは、eo光ネットに申し込んでいただいた方には、1回線につき1つのIDを付与していますが、家庭などの場合、1回線を複数の人が利用していると考えられます。

現在IDを持つ75万件の方々に平均3人のPCを利用する家族がいると考えると、75万件×3=225万人の方々にIDを付与することができます。こう考えると、ネット配信事業の裾野は限りなく大きいのではないでしょうか?

将来にわたって当社のライバルはNTTですが、全国規模で見ると、NTT東西の占める光ファイバー事業における市場シェアは圧倒的に大きいものがあります。ですが、近畿圏におけるNTTのシェアは全国平均より低く、当社もなかなか頑張っているのではないかと自負しています。

これだけ健闘している理由として、一般家庭にもPCまで直接1Gbpsで配信できるようにするなど、NTTに先駆けて常に新しいことをやってきたことがあげられます。今後もそうした努力を行っていきたいと考えています。

公正な競争が促進される法制度整備に期待


――NTTぷららなどが始めた地上デジタル放送のIP再送信については、いかがですか?

今後の検討課題ですが、当社のeo光テレビはCATV方式を採用し、お客様宅に引き込んだ2芯の光ファイバーのうち、ネットと電話を1芯で、テレビをもう1芯で伝送しているため、ハイビジョン放送などの大容量にも対応することができますが、IP放送は、1本の光ファイバーをネット・電話・テレビで共有しているため、それぞれの利用に影響することになります。

また、既設の同軸ケーブルがそのまま利用可能で、LAN配線を新たに敷設する必要はないことから、優位性があると考えており、慌ててIP放送を実施する必要はないと思っています。むしろ、当面はIPv6への対応を優先していきたいと考えています。

――著作権者の権利の一部を制限する「ネット法」などに対しては、どのようなお考えをお持ちでしょうか?

現在のネットの法案で示されている、放送事業者や映画事業者にネット流通の権利を集約するというのは、個人的にはどちらかと言うと賛成の立場です。

というのも、現状では、自社でネット配信するための著作権の処理が大変で、それが一箇所にまとめられれば、非常に便利だからです。

――なるほど。それでは、総務省で検討されている、放送と通信の融合を図る「情報通信法」についてはどのようにお考えでしょうか?

ハードウェアプラットフォームを含めたデジタルに関わる全体が融合していくという「デジタル・コンバージェンス」の動きは時代の趨勢であり、必然的ではないかと思っています。

当社でも、電話、ネット、テレビを一体的なサービスとして提供しており、これらはすでに融合しつつあります。

いずれにしても、各事業者が公平・公正に競争が行え、自由に新規参入ができるような環境に寄与する法整備がなされることを期待しています。