「SAP Strategy Management7.0」は基本的に、企業の戦略的目標を達成するための要素である、達成のための活動、それを計量する指標を管理する。ログオンすると、各エンドユーザ個人にとって、最も関連度が高い情報が表示され、管理者やプロジェクトの責任者は、目標に対する進捗状況を即時、把握することができる。
ここで大きな特徴となるのは、単に実績や指標の数値データの見える化ということに留まらず、リスクを加味した企業業績の分析に重点を置いていることだ。同社が注力してきたGRC(企業内統治、危機管理、法令順守)のソリューションを活用しており、「これまでのツールでは、コストや在庫の量の明確化などが重視されていたが、どこで、どんなリスクが発生しているかというような、GRC側にあるデータも取り込める」(桐井氏)。さらに、責任分担とその相関関係を明示し、各人の任務が、目標達成のためのどのような構成要素になるかが示される。
今回の製品で、もう1つの柱となるのは、「プライオリティの把握」だ。設定された目標の過去から現在までの推移、さらには次の段階の計画も含め一覧表示し、未来への構想も念頭に置いて行動できるような視点を提示している。また、営業の最前線、工場など生産現場、あるいはバックオフィスなど、部署に応じた指針を明確化することで、業務遂行を支援する。
「SAP Strategy Management7.0」は、SAPの旗艦プラットフォームである「SAP NetWeaver Portal」との連携が可能で、同Portalからシングルサインオンで、起動させることができる。SAPのERPをはじめとする幅広いデータソースから、財務管理、売上げ予測といったデータを、SAP NetWeaver Business Intelligenceとの連動により、多角的に活用できる。
コラボレーションと管理の面では、ステータス概要を把握できるスコアカードの活用で、他部署の活動内容とその重要度は、部署相互間で認識できるようにすることにより、それぞれの部署が、全体最適化の流れに沿って作業ができるようになるという。
同社では、「SAP Strategy Management7.0」の販売ターゲットとしては、まず、既存のSAP ERPの顧客で「ERPなどを業務の基盤として利用しているところで、蓄積されたデータを、見える化したい、あるいは、見える化はできたが、その分析と、それらをどう行動に結びつけるかを考えている」企業を見込んでいる。また、独SAPが昨年統合化したBusiness Objectsの顧客で、データウェアハウスに格納されたデータの活用も希望する層や「BIツールだけでは。データ管理が困難と感じている層」を狙う。さらに、SAP、Business Objects(BO)の顧客以外の、KPI管理に悩む企業にも照準を合わせる意向だ。
パートナー戦略では、既存の企業への情報提供や支援は当然行っていくが、今回の製品では、新規パートナーの開拓にも注力する方針だ。それは「この製品は、現行のERPとは異なったスキルが必要で、開発に伴うリスクはないものの、顧客となる企業の戦略、ビジネスを理解し、目標を定量化するような能力」が求められるからだ。そこで同社は、業務コンサルティングとソリューション導入コンサルティングが同時にできるようなパートナーを募っていく予定だ。
同社は、「SAP Strategy Management7.0」の発表と同時に、当面のEPM戦略の方向性も明らかにした。今後は、BOのBI製品群を有機的に、SAPの製品体系に融合化させ、EPM市場での成長を期した強力な推進力にしていくことが目標となる。同社は今後、EPM製品群として、予算管理、プランニング管理の「SAP Business Planning and Consolidation7.0」、収益の管理・分析の「Business Objects Profitability and Cost Management7.0」OLAP分析の「Business Objects Financial Consolidation7.0」を順次、投入、「SAP Strategy Management7.0」も含め、最終的にこれらによるスイート製品「EPM8.0」を2010年をめどに提供する。
「SAP Strategy Management7.0」を中心とする製品を、「EPM7.0」とし、BOのBIとSAP NetWeaverとの統合の第一段階に着手、2009年に提供する「EPM7.5」では、両社の統合を完成させるとともに、EPMを駆使することで実現する、戦略、意思決定、実行、その監視により検知される洞察をまた、戦略にフィードバックするという「クローズドループ」を軌道に載せる。EPM8.0では、それぞれ異なる機能を担う4製品をスイート化し、ユーザーインタフェースの共通化、ここで用いられるメタデータ、プロセスの協調を行い、より使いやすくする。
桐井氏は「EPMに力を入れるのは、ERPの活用だけでなく、そこで集まるデ-タを、戦略実行のために、さらに活かしたいとのニーズが背景にあったからだ。今回の戦略は、市場からのニーズを考慮し、それに応えるための策だ。法令順守、見える化も重要だが、パッケージだけでなく、戦略に活かせる付加価値の提供も必要になる」と話し、EPM分野で、いっそう積極的に展開していく意向を示した。