Oracleのデータベースといえば、業界に先駆けてRDBMS市場を切り開いた製品であり、業界リーダーの1社として長年にわたってトップとして君臨してきた。それはいまでも健在で、つい先日の決算発表ではデータベース市場でのシェアが49%に到達し、ほぼ半数を押さえる状態にまでなったことを報告している。Oracle DBはすべてのOracle製品のコアであり、他の製品が売れればデータベースも売れるという相乗効果を期待できる点も大きい。Rozwat氏の基調講演ではシェアだけでなく機能面でもいまだ優位にある点を強調しており、前回からのアップデートもスケーラビリティやパフォーマンス関連の強化が中心など、まだまだ業界トップの貫禄を感じさせる内容になっている。

そんなOracle DBで注目の発表がクラウドコンピューティングへの対応だ。Oracleではクラウド対応の第1弾としてAmazon Web Servicesとの連携を発表しており、Oracle製品のライセンスを持つユーザーは米Amazonの提供するAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)の中でOracle DBをはじめ、Fusion Middleware、Enterprise Managerといったソフトウェアを動作させることが可能になる。同社ではこれらOracleブランドをEC2の中で動作させるためのAmazon Machine Image(AMI)を提供しており、これらクラウド環境向けにチューンされた仮想マシンのイメージを利用することで、すぐにクラウドの利用を開始することが可能だ。このほか、クラウドをOracle DBのバックアップ代わりに使うことも可能だ。Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)のストレージ空間をバックアップ先に指定することで、クラウドを一種のリモートサイトとして利用できる。

データベース製品のアップデート。正式リリースから1年近くが経過した11gだが、機能面での優位性をアピール。新製品ではパフォーマンスやスケーラビリティの改善が図られている。そして初となるDB 11gのクラウド対応を発表。Amazon EC2やS3との連携でデータベースからインターネット上のクラウドが利用できる

これらインフラを支えるのがUnbreakable Linuxと、前回のOracle OpenWorldで発表されたOracle VMの2つ。今回のアップデートはOracle VMで強化された高可用性(High Availability)機能

Oracleでは上記3つの柱のほか、基幹プラットフォームとなるOSの提供も行っている。代表的なのが2年前のOracle OpenWorld 2006で同社CEOのLarry Ellison氏によって発表されたUnbreakable Linux(2.0)で、既存のWindowsやLinuxディストリビューション以外にも、Oracle謹製の製品として選択肢の1つとなる。もう1つが近年ブームになっている仮想化(バーチャライゼーション)で、こちらもやはり去年のOracle OpenWorld 2007で発表されたOracle VMがその役割を担う。XenをベースにしたOracle VMはハイパーバイザの機能を持っており、複数のOSインスタンスを1つのシステム上で動作させ、サーバ統合を行うことが可能だ。今回の発表ではOracle VMに新たに追加された高可用性(High Availability)が紹介されており、壇上のデモストレーションで2つのサーバをまたいで仮想マシン(VM)がフェイルオーバーする様子が見られた。

上記に加え、ユーザー向けの新たなサポート強化策も発表されている。その1つが「My Oracle Support」で、以前のユーザーサポート向けページをWeb 2.0技術をベースにリニューアルし、より使い勝手を向上させたとOracleでは説明する。基本的にはナレッジベースの蓄積でユーザーの問題解決を図るもので、よりスピーディに解答が得られるよう工夫されているという。

2つのサーバからリソースプールが提供されて動いている環境で片方のサーバが落ちた場合、その上で稼働しているVMがもう片方のサーバに自動的にフェイルオーバーする

カスタマーサポート向けの新ポータル「My Oracle Support」。従来のサポートポータルと比較して40%問題解決が早くなるという。ナレッジベースでサポート情報を共有する