2008年9月16日、17日の両日、丸の内のMY PLAZAホールで理研が主催する次世代スーパーコンピューティングシンポジウムが開催された。次世代スパコンは平成22年度末(2011年3月)の一部稼動、平成23年度末(2012年3月)の完成を目指して順調に開発が進んでおり、また、次世代ナノ統合シミュレーション、次世代生命体統合シミュレーションというグランドチャレンジアプリケーションも並行して開発されている。そして、これらが完成すれば、次世代スパコンを使った最先端の研究、開発が始められることになる。

となると、その次は、スパコンを使った研究、開発において世界のトップグループで走り続けるためには、スパコンを使いこなせる次世代の人材を育てることが重要になる。今回のシンポジウムは、この人材育成に焦点を当てたシンポジウムとして開催された。

システム開発状況

理研の次世代スーパーコンピュータ開発実施本部のプロジェクトリーダーである渡辺氏からプロジェクトの開発状況が報告された。

次世代スーパーコンピュータの開発スケジュール。(出典:理化学研究所次世代スーパーコンピュータ開発実施本部のウェブサイト)

開発の状況は、この予定通りであり、現在は、神戸のポートアイランドで計算機棟の建設のための基礎工事が行われている。また、システムに関しては、詳細設計の途中であり、特に外部に公開できるような成果はないが、CPUやネットワーク用チップの論理設計を実施中であり、並行してテストチップを作って45nm半導体プロセスを評価している。また、電源、冷却、実装構造に関しても設計中と説明された。

ソフトウェアは、ファイルシステム、運用ソフトウェア、言語・コンパイラ、ライブラリ等を設計中であり、また、フロントエンド部の詳細設計を実施中と説明された。

今後の主要なマイルストーンとしては、2009年初めにCPUやネットワークチップのテープアウトと2010年の量産開始、2010年5月の建屋の完成、2011年3月の一部稼動、2012年3月の全面稼動ということになる。

今回の開発状況報告では、システムに関しては、スカラ部とベクトル部からなる複合型という従来の説明の範囲を超える情報は発表されなかったが、シンポジウムの別の場面で、アメリカとの熾烈な競争があり詳細な仕様は公表できないが、アプリケーションの開発グループには、ソフトウェアの設計上必要な仕様を開示していることが明らかにされた。