オープニング&キーノート
筆者の偏ったレポートに入る前に、まずは同カンファレンスの主な話題を改めておさらいしておこう。
今年のTech・Edは、マイクロソフト日本法人の樋口社長による基調講演から始まった。
氏は、クラウドやモバイル、仮想化によるサーバーの統合や相互運用など、ここ数年のITの潮流を解説し、これを実現する同社の製品や技術を紹介。そのうえで、「技術者・開発者こそがMicrosoftの命である。技術者が一番偉いと考えている。これこそが大方針である」と、同社の考えを説明し、これを繰り返し強調した。さらに、具体的な技術者支援策として、技術資料の翻訳やオンライン掲示板の設置などに取り組んでいくことを約束。技術者に対する世間の評価が不当に低いと叫ばれる日本において、そうした状況を打開しようという姿勢が垣間見える特徴的な講演となった。
続いて米MicrosoftのSQL Server データベース エンジン開発部門ジェネラルマネージャを務めるQuentin Clark氏が登壇し、Dynamic ITの概念とその実現について述べた。
氏は、「the Microsoft Conference 2008」の講演内容を踏襲しつつ、Dynamic ITを解説。「ITが以前に比べビジネスや社会にとって重要になっている。だが、それゆえに保守に投資が集中しており、イノベーションに投資される割合が少ない。これを逆転させなければならない」と語り、Dynamic ITによってITを戦略的な資産にできると説明した。
また、Dynamic ITの具体的な事例として、「ぐるめっと.com」という仮想的なサービスを使ってデモンストレーションを行った。このサービスでは、SQL Server 2008で新たに追加された"空間"データ型を応用し、Virtual Earthと自社データベースを連動させて、起点から一定の距離にあるレストランの情報を地図上に表示。さらにSilverlightを使って、動画などを組み合わせたリッチなインタフェースをデザインすることで、顧客にとって魅力的なアプリケーションを構築していた。まさに、最新のデータアクセス技術やWebサービス、ユーザーエクスペリエンスを組み合わせたデモンストレーションとなった。
Microsoftの強みはWindowsプラットフォームを中心とした高度なソフトウェア資産を応用した巨大なバックグラウンドが存在することだろう。これらの製品を組み合わせることで、必要な部分を統合したり、分散させたりすることができる。運用管理者にとっても開発者にとっても、使い慣れた既存の製品に対する知識を応用できるのは重要だ。