H BOX
企画・制作はエルメス、設計はディディエ・フィウツァ・フォスティノによる作品。「H BOX」は、エルメスが2007年からプロデュースするアルミニウム製の移動式映像上映室で、パリのポンピドゥー・センターや、ロンドンのテート・モダンなどの美術館を巡り、この横浜トリエンナーレ2008でアジア初上陸となる。この「旅するヴィデオアート」ユニットで上映される、10分前後の短編映像は、アリス・アンダーソンの「青ひげ」、ヤエル・バルタナの「白昼夢・悪夢」、セバスティアン・ディアズ・モラレスの「神託」、ドラ・ガルシアの「フィルム(オテル・ヴォルフェール)、ユディット・クルタグの「ミッドウェイ」、ヴァレリー・ムレジャンの「つぶやき」、シャリアー・ナシャットの「プラーク(スラブ)」、ツェ・スーメイの「オープン・スコア」の8作品。エルメスは、馬で移動するための堅牢な道具づくりから始まり、今もその職人技を伝える企業として、重厚なアルミニウムの旅行鞄を連想させるこのユニットで、多様な複合的文化背景を持つアーティスト8人のビデオ作品を上映する。大さん橋国際客船ターミナルにて展示。
レゾナンス
小杉武久の作品。1960年代から「Waves(波動)」に注目し、例えば天井から電波発信機と受信機を吊るし、その間で起こる電波の干渉現象によって音を発生させるなど、さまざまな波動による総合的な表現を実現させる。「レゾナンス」(2008年)は、淡い光のもれと、壁に設けられたパルス波発信機を組み合わせ、エリアを回遊すると、その位置によってさまざまな見方、聞こえ方が体験できる空間になっている。日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)にて展示。
私たちの生きる時代に
シルパ・グプタの作品。グローバリゼーションが進む現代における社会的不平等やパワーポリティクスなどの問題を一貫して提起している。ビデオやインターネットなどのマルチメディアを用いて、インタラクティブな関係を構築。「私たちの生きる時代に」(2008年)は、両端2本のマイクがシーソー状に揺れて、複数の語り手の声が重なるように発する。横浜赤レンガ倉庫1号館にて展示。
今回紹介できなかったが、他にも時間を忘れて見入ってしまう作品や、そこから抜け出せないほどの世界観を持った作品があふれている。また、会期中の土・日・祝日を中心として、数々のイベントも催される予定だ。現代芸術を身近に感じることができるイベントなので、気軽に足を運んでみてほしい。横浜トリエンナーレ2008は、新港ピア、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、赤レンガ倉庫1号館などをメイン会場とし、11月30日まで開催される。