BPMをどの部門がリードするのかということに関しても、日本では78%がビジネス部門が主導し、16%は特命チームが主導するという結果が出ているが、北米ではIT部門が主導するケースが26%もある。ビジネス部門主導のBPMはITを放置して進み、全体最適観点の欠落、プロセスやアプリケーションリポジトリ等の共通化の不備などの問題が発生する危険性があるという。

IT部門によるBPMのリードを実現するために必要なのは、その力をもった人材だ。海外でも今後の最大の課題として、スキルとリーダーシップを持った人材の獲得が挙げられている。 広く浅い知識をもったジェネラリストと、1点に対して深いスキルをもったスペシャリストという形で人材を分けた場合、双方を兼ね備えた人材が求められる流れは従来からあったが、IT部門によるBPMのリードに必要となるのは「バーサタイリスト」と呼ばれる人材だという。これは、深いスキルと広い役割の領域、広範な経験をもち、他領域からも認識されているような多芸者を指す。 「多くの企業にとってこのクラスの人材を買って来るのは非常に難しいだろう。それよりは、早期に着手して自社内で育成することが現実的な解だと考えている」と和田氏は語った。

日本企業がビジネスプロセス革新を実現する具体的な手法として、和田氏は2つの形を挙げている。1つは、迅速に大きな結果を出す「ビッグバン型」だ。これは日本型IT投資の好むパターンであり、うまく行けば一気にプロセス革新が実現する可能性をもっているが、第一段階で求められるハードルが高くなるという問題がある。

ビッグバン型(出典:ガートナージャパン)

もう1つは、時間をかけて結果を出す「新陳代謝型」だ。こちらは、スモールスタートから長い目でビジネスプロセス革新の芽を育てることになるため、IT部門には長期的にビジネス側をナビゲートする戦略眼とリーダーシップ、目的地をぶれさせない全体図やロードマップが求められる。

新陳代謝型(出典:ガートナージャパン)

「日本のIT投資の傾向として、何年かに1度思い切った投資をするというものがあり、中長期的にどう動かすかという視点がない。短期的な取り組みを繰り返すことが、ビジネスプロセスの革新が進まず、人材が育っていないということの裏側にある」と和田氏は日本企業の問題を指摘する。

日本にはビジネス側、IT側ともにビジネスプロセス革新に対するマインドやスキルが不十分であり、実現に向けては慎重な決断が求められる。特に、ビックバン型のアプローチは多大なコストの浪費につながる可能性がある、大きな賭けだ。和田氏は、ビックバン型を制御するにせよ、新陳代謝型を完走させるにせよ、IT側がシナリオを書いてビジネス側を誘導するということが、成功の前提であり、最大の要因であるとしている。