--宇野さんは、QuarkXPress 8の魅力はどこにあると考えていますか?
開発面でもっともフォーカスしたのはプロダクトのグローバル化です。これは日本だけでなく、西欧諸国からも高い要望が出ていました。とくに最近では、印刷のコスト削減を図るために他国で印刷を行うパターンが増えてきています。たとえば、米国のある大手印刷会社は中国で印刷を行っていますが、以前のQuarkXPressではデータを開くためにパスポート版か英語版が必要でした。お客様の要望は「PDFにしてしまうと修正が効かない。なるべくネイティブファイルを取り扱いたい」ということでした。この要望に関しては、ほとんどのユーザーの方が、これまで思われたことなのではないでしょうか。そこで、QuarkXPress 8では出力も保証できる多言語化を図りました。
これは、内部コードのユニコード化で実現しました。開発側もリソースの一体化でコスト削減につながったり、発売時期をコントロールしやすくなるというメリットがあります。おかげでバージョン8では全世界同時リリースが実現しました。ですから今回は、特に日本語版の完成を待ったというわけではなく、本当の意味でのグローバルリリースでした。私たちは、全社を挙げてユーザーの信頼を取り戻したいと考えているのです。
--多言語化について、もう少し詳しく教えてください
QuarkXPress 8日本語版のユーザーインタフェースには、英語版、中国語版(繁体字版/簡体字版)、韓国語版が用意されています。これはMac OS Xの言語によってデフォルトのインストール時に自動的にユーザーインタフェースも切り替わるように設計されています。また、各国語版で必要とされる機能はそれぞれ異なりますが、QuarkXPressのソフトウェアにはすべての機能が含まれておりますので、日本語ドキュメントをバージョン8のどの言語版で開いても組版やその他の設定値が維持されようになっています。
--互換性の高さも安心してアップグレードできる大きな要素ですが、実際には問題はないのですか
旧バージョンのデータを開くことは、ユーザーの資産を活かすことにつながります。日本語版ではバージョン3から6までのデータを開くことができ、社内の検証結果では、かなりの精度でレイアウトを維持しています。
では、維持できない部分は何なのかということになると思いますが、これは新バージョンとの機能差によるものです。たとえば旧バージョンでは、行末のルビが親文字より長い場合の処理がうまくできていなかったのですが、QuarkXPress 8日本語版ではルビ機能が強化され、この問題が解決されています。こうした旧バージョンで問題だった部分まで引き継ぐことは不可能だったということです。今後も引き続きアップデータのリリースを行っていきますが、その中で旧データとの互換性についても更に精度を高める予定です。
--ユーザーインタフェースも新しくなり、新鮮な印象を受けましたが、変更されると逆に使い辛くなることもあるのですが、その点は大丈夫でしょうか
確かに新しくはなりましたが、QuarkXPressらしさは失ってはいません。社内にはQuarkXPressのユーザーインタフェースに関して信念を持って決めているスタッフがいますので、大きく変更はしていないんです。その代わり、ユーザーがやろうとしていることに合わせて、インタラクティブにツールが切り替わっていきます。たとえば、一度作った画像ボックスにテキストを流し込もうとしたとき、いちいちコンテンツの内容を設定し直す必要はありません。テキストをドラッグ&ドロップすれば、そのまま流し込むことができます。
プロ用ツールとして操作の重要なポイントであるショートカットキーについては従来の仕様から変更はしていません。既存ユーザーが使いやすい環境をそのまま残すようにしています。だからといって、新規ユーザーに難しいのでは意味がありません。そのためのインタフェースが直感的なツールの操作なんです。機能の増減に対応して表示内容が変わるツールパレットや選択中のアイテムに対応して変化するメジャーパレットなどを装備していて、処理もプレビューを見ながら試行錯誤できます。これは今までのQuarkXPressになかったユーザーエクスペリエンスな部分です。