ついに発売になったQuarkXPress 8日本語版。しかし、どんなに「今回は素晴らしい製品です」といわれても実際に手にするまでは不安だ。特にQuarkXPress 8に関しては、多数のスタッフが辞めたり、アウトソーシング先のインドで開発がうまくいっていないという噂も耳にする。そこで、日本語組版機能に大きな役割を果たした米Quark社のプロダクトマネージャー宇野カオル氏にその真相について聞いた。実際に日本のユーザーにヒアリングし、「可能な限り必要と思われる機能はすべて搭載した」という宇野氏。これまで、外部には知らされていなかった真実を我々に語ってくれた。

自慢げにQuarkXPress 8日本語版のディスクを掲げる米Quark社のプロダクトマネージャー宇野カオル氏

--2006年11月に新しいCEOが着任され、方針が大きく変わったと聞いていますが、開発環境はどうですか。特に噂ではスタッフがほとんど辞めて、まともに開発できないのではないかという話も聞きますが…

以前のQuark社では、コストを下げるためにすべての開発リソースをインドに移そうとして、日本と同じように海外でも信頼を失ってしまった時期がありました。2006年11月にCEOに就任したRaymond Schiavoneは「人材はモノではない」という考え方の持ち主です。我々とのミーティングでも、毎回「能力は資産だ」と話しています。CEO自身がエンジニア出身ということもあって、スタッフの維持が何よりも大切だと考えているんです。

実は、QuarkXPress 8の開発にあたっては、自分も含めて多数のスタッフがカムバックしているんです。現在では、英語版、日本語版の開発拠点はデンバーですし、品質管理は東京でも行っています。つまり、グローバル化は進んだけれどコストを追求するというだけではなく、個々の才能を大切にした社風に変わってきたということです。米国のサポートも以前はインドで行っていましたが、今は米国内に移管しました。やはり自国のユーザーは国内でサポートすべきなんです。そして現在では、サポートで得られた情報を大切な資産として開発部門に届ける仕組みが整っています。もちろん日本のサポートは日本で行なっています。

--ずっと謎だったのが、QuarkXPress 7日本語版の存在です。プレビューだけされて結局発売には至りませんでした。その理由は何だったのでしょうか?

そもそもQuarkXPress 6日本語版は、Mac OS X上で動作するバージョンとしてリリースしましたが、日本語の組版機能に関して詳細なコントロール機能などは搭載されていませんでした。ただ、動作するだけではユーザーにとって魅力的な製品とは言えなかったのかもしれません。そのため、そのままバージョン7をリリースしても、同じ失敗を繰り返すだけになってしまいます。ユーザービリティや日本語組版機能を考えるとQuarkXPress 7日本語版を出すことに大きなリスクが生じる可能性があり、ユーザーも満足できなかったでしょう。

また、日本語版をユニコード化するのにも時間が掛かっていました。実は、プレビュー版があったことからわかるようにQuarkXPress 7日本語版は存在したんです。ですが、バージョン7を発売してすぐ新バージョン(バージョン8)をリリースすることになってしまっては、ユーザーに迷惑が掛かってしまうことになります。それでは本末転倒ですよね。

そのためバージョン7日本語版のリリースは諦め、ユーザーがDTPレイアウトソフトに本当に望んでいること、必要としている機能をきちんとリサーチした上でバージョン8を開発し、世界同時に発売しようということになりました。