メリット1 一次エネルギー消費量が少なく資源を節約できる

灯油や天然ガスなどの一次エネルギーを平均14%(2006年度設置分でトップランナー機種を設置した83世帯の平均では24%)、灯油量換算で18リットル缶10個(同18個)分の資源を節約できるエネファームだが、実は、発電効率だけで比較すると、同量の燃料から得られる電気エネルギーは大規模火力発電所の方が多い。エネファームの省資源性は「使う場所のそばで発電するので送電ロスが低減すること」「排熱を給湯に利用できること」によって優位性が保たれている。もちろん、各システムメーカーは発電ユニットの発電効率改善や、発電量を各家庭のライフスタイルに最適化するコントロールの精度向上に取り組む。

エネファームの資源効率が高い理由 (c)財団法人新エネルギー財団(NEF)

現在システムの研究・開発に取り組み、実証実験に参加しているメーカーは以下の5社。ガス会社なども含めた関係企業として燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)を構成し認知度の向上などを目指した協力体制を築きつつ、発電効率や、販路の獲得を競っている。各社の性能比較は以下の表のとおり。ただし、各社が公表している発電効率や排熱効率は、性能をめいっぱい発揮できる条件での使用を前提としており、「省資源性はメーカー間の性能の僅差よりもあくまでも家族構成や生活パターンに左右される部分が大きい(燃料電池推進室)」とのことだ。

社名 設置実績(合計) 設置実績(燃料別) 定格発電出力 発電効率 排熱回収効率
ENEOSセルテック 749 LPガス:635 750W 36% 44%
都市ガス:114 750W 35%以上 - (総合効率80%以上)
荏原バラード 556 都市ガス:330 1kW 34%以上 44%以上
灯油:226 - - -
東芝燃料電池システム 545 LPガス:433 700W 33%以上(目標) 50%以上(目標)
都市ガス:112 700W 35%以上(目標)
松下電器産業 285 都市ガス:285 1kW 38% 55%
トヨタ自動車 52 都市ガス:52 1kW 38% 52%

メリット2 CO2排出量が少なく、CO2排出削減に効果的

エネファームは、低炭素性の面でも平均27%(2006年度設置分でトップランナー機種を設置した83世帯の平均では39%)のCO2削減効果 が確認されている。なぜかといえば、まず、水素と酸素の化学反応ではCO2は排出されない。燃料から水素を取り出す際に発生するのでゼロではないが、同じ量の燃料を消費しても、燃焼させるのと比較して排出量は少なく、さらに消費量が少ないため総体的にCO2排出削減効果が得られる。なお、水素を都市ガス/LPガス/灯油のどれから取り出すかによってCO2排出量は異なる。

京都議定書で2012年までに95年比-6%。さらには、6月9日に福田首相が示した「福田ビジョン」では2050年までに05年比で60~80%のCO2排出削減という目標が掲げられた。しかし、家庭部門のCO2排出は、以下のグラフに示したように90年比で36.7%増加しており、対策が急務となっているのだ。

京都議定書では、2008年度~2012年度の温室効果ガス排出を、基準年の1990年度から平均値で6%削減することを約束しているが、実際には2005年度の時点で+7.8%となっている 出典:平成19年度定置用燃料電池大規模実証事業報告会「燃料電池の普及拡大へ向けた国の取り組み」(c)経済産業省資源エネルギー庁燃料電池推進室

温室効果ガス排出量に占める、エネルギー用途を起源とする二酸化炭素量は、1990年度実績で84%。10%を占める家庭部門からの排出は、2005年度実績で36.7%増となっている 出典:同上

広瀬氏によれば、エネルギー政策を担当する経済産業省は、太陽電池/バッテリー(蓄電池)/燃料電池を"電池三兄弟"としてエネルギー分野における対策の三本柱に据えており、09年度から普及促進を狙った補助金の制定を検討。また、集合住宅への設置を始めとするさらなる実証実験データの取得や、既存技術が持つ弱点の克服を進めるとしている。

メリット3 水素はさまざまな原料から取り出せる

ところで、エネファームは、省エネ性や低炭素性だけを見るとすでに販売されている高効率給湯器や、前出のエコジョーズ、オール電化住宅などに設置されるヒートポンプ式給湯器と大差はないという。にもかかわらず、政府がエネファームの技術開発や普及に注力する理由について燃料電池推進室は、「水素は多くの物質から取り出せる、化石燃料に代わるエネルギー源だから」と話す。水からも取り出すことができるほか、現在、石油プラントや化学工場からは水素が破棄されている。

水などの物質から水素を取り出す技術や、貯蔵技術、インフラの整備が進めば、これまでの化石燃料を原料とする"中央集権型発電"から、さまざまな物質を原料とする分散型発電が可能になる。これにより、確認埋蔵量の減少や投機マネーの流入などによる市場の不安定化、生産の高コスト化などさまざまな問題を抱える化石燃料に過度に頼ることなく、日々の暮らしや経済活動を営むことが可能になると考えられている。

水素インフラなどの実証研究のひとつである霞ヶ関ステーション (c)水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)

水素貯蔵技術のひとつである水素貯蔵合金 (c)日本重化学工業株式会社

化石燃料由来の火力発電に代わるCO2排出の少ない発電方法としては、すでに原子力発電が利用されているが、現在、原子力発電を扱う電力会社や発電プラントメーカーも燃料電池の研究に着手しているという。水素には、エネルギー業界のさまざまな立場の企業・団体から、熱い視線が注がれているといってよさそうだ。