一般に、SOAの疎結合については、サービスの粒度をどう設定するかが問題だとする議論があるが、その点について澤井氏は、「疎結合と粒度は本質的には無関係だ」との見解を示した。
同社では疎結合の定義として、「業務上の依存関係がない二者において、一方が他方に影響し合わない状態」というものを用いており、そのうえで、「SOAを推進するうえでは、提供するサービスの大きさを決めることよりも、業務(サービス)が他から独立しているかどうかを見分けることを重視している」と説明した。
また同社では、こうしたESBによる方式設計の共通化とともに、UI設計、開発、テストといった行程においても、各行程でのひな形を提供するための共通基盤を構築しているとも説明。この共通基盤は、商品システムやPOSシステム、情報系基盤、EDI基盤、認証基盤などといった各システム基盤の全体像を示したもので、各システムには、共通の「共通概念仕様書」「共通方式設計書」が適用されるという。
全体で2分の1のコスト削減効果
運用にあたっては、部署横断的なアーキテクチャ・チームが編成されている。このチームが共通基盤に沿って、各行程を担当するチームに対して、プロジェクトの進め方の提示や技術サポート、不具合の原因調査、テストなどを行う。なお、同チームは、状況に応じて陣容が変化するといい、現在は4名だが、最大では20名程度で構成したケースもあったという。
澤井氏は、「共通基盤は、アプリケーション設計において、データモデルやアプリケーションモデルなどの要素間で不整合を起こさないための作法と言える。リファレンス・モデルに沿うことで、業務の視点に立った柔軟なアプリケーション開発が可能になり、全体最適につながる」とした。また、その具体的なコスト削減効果としては、全体で2分の1、方式設計で10分の1のコスト削減効果が得られたことを明かした。
ただ同氏はSOAの効果、特にROIについては、コスト効果を期待してSOAの導入を検討すべきではないとも指摘。そのうえで、「最初からSOAというモデルに当てはめてしまうと、それに合わない場合はどうするのかといった議論に陥り、方向性が誤まってしまう。標準化を行うことによって、どれだけのコスト削減効果が得られるかという視点で議論を進め、最終的にSOAのようなモデルに落ち着くという理解が望ましいと思っている」と語った。