インテル マーケティング本部ビジネス・クライアント・マーケティング部長 廣田洋一氏

ビジネス・クライアント(vPro)に関しては、同社のマーケティング本部ビジネス・クライアント・マーケティング部長の廣田洋一氏が説明を行なった。同氏は、「電力消費に関してデータセンターでの対応が問題になることが多いが、数の多さから、オフィスに設置されたPCおよびモニタが消費する電力も無視できない」とし、この分野での取り組みの重要性を明らかにした。

同氏はvProについて、「通常のPCに対して運用管理性やセキュリティに関して付加機能を提供する」ことを目的に開発されたものと位置づけ、処理性能や省電力性に関しては通常のPCと特に違いはないとしつつも、プロセッサの性能向上によってvProも処理性能や省電力性で大きな進歩が見られるという。例えば、2006年と2007年の製品で比較すると、カタログスペック値としてのプロセッサのTDP(最大消費電力)は同一だが、実運用時に問題になるアイドル時の消費電力や、システムレベルで見た場合に問題になるチップセットの消費電力などでは55~60%の改善が見られるとのデータを紹介した。

企業におけるCO2排出比率

最適なPCの選択・運用を行うことで省電力化が可能に

さらに同氏は、3世代のvProマシンをベンチマークで比較し、最新世代のマシンではアイドル時の消費電力が低下していることと性能が向上していることの相乗効果で、同じ処理を実行するのに要する電力量が軽減されるというデータを紹介し、「古くて性能の低いプロセッサを使い続ける方がエコだ、という認識は間違い」だとした。ユーザーの使い方にも大きく依存する話ではあるが、一般的なクライアントの使われ方ではアイドル時間が長いことは容易に想像できるため、アイドル時の消費電力削減が有効であることは間違いなさそうだ。

3世代のvProマシンのベンチマーク比較

vPro搭載システムと既存システムとの消費電力比較

このほか、組込製品への取り組みとしてAtomプロセッサに関する紹介も行なわれたが、ここでは割愛する。

基本的には、インテルのエンタープライズ分野における取り組みを網羅的に紹介した形だが、昨今の環境意識の高まりを踏まえ、全ての技術を「エコ」という視点から語った点が今回の特徴だった。確かに消費電力の削減は重要なテーマであることに間違いはないが、一方でその裏付けとなる技術としては、すでに市場投入されている45nm High-kプロセスによるリーク電流軽減が主で、新しい技術が発表されているわけではない。エンタープライズ・コンピューティングへのインパクトとしては、むしろ仮想化の普及をハードウェア側から支援するVT関連の技術のほうに期待したいところだ。

仮想化に関しては、ハイパーバイザやOSに加え、ハードウェアも急速に進化しており、その相乗効果で現状の環境があっという間に古くなっていく状況だ。ハードウェア側での仮想化支援機能が充実すれば、ハイパーバイザやOS側もそれを活用するように進化するはずであり、企業ユーザーにとっても目を離せない分野となるだろう。