PUEという電力使用効率を示す指標がある。これは、データセンターやマシンルームなどのすべての電力量を、サーバなどIT機器が使用する電力量で割ったものだ。IT機器以外の設備の電力消費量としては、空調に使う部分が圧倒的に多いので、冷却効率の指標として用いられることも多い。一般的には「3」程度で、「2」だとかなり優秀な部類入る。各メーカーでは、この数字を「2」以下にしようと努力しており、IBMでは「1.7」を目標としている。そして橋本氏は、「IT業界が直面しているエネルギー問題としては、データセンターの電力消費量の削減が大きい」と語った。
これに対して、IBMは昨年5月、3つの施策を実行することを決めたという。 1つ目は、Greenテクノロジーやサービスへの投資を毎年10億ドル(約1000億円)行うこと。2つ目は全世界に850名以上のエネルギー効率専門家のチーム「Green Team」を立ち上げ、エネルギー効率化に対する支援を行うというもの。そして3つ目が、2010年までに現在の電力消費量を変えずに、処理量を2倍にする技術を確立するということだ。 そして、これを実現するためにIBMでは5つのアプローチをとるという。
データセンター内の熱の分布、風の流れなどを可視化する「診断」、どうしたら効率的なデータセンターを作れるかを考える「建設」、サーバを統合する「仮想化」、コンピュータの効率よい電力消費をコントロールする「管理」、どうしたら効率よくデータセンターを冷やすことができるかを考える「冷却」の5つだ。
診断という面では、データセンター内の熱の分布を測定するMMT(Mobile Measurement Technology)という機器をIBM基礎研究所が開発。これにより熱だまりが発生する箇所を特定し、エアコンの吹き出し口の方向を変える、機器の位置を変えるなど対策により、冷却を効率的に行えるよう改善するのだという。また、この技術は一般住宅にも応用できるという。
建設に関しては、モジュラーデータセンターを提案している。これは、20/50/100平方メールのモジュラーを用意し、それを複数組み合わせることによってデータセンターを構築しようというものだ。中規模であれば2~3カ月で構築が可能だという。
冷却に関しては、データセンター全体を冷やすのではなく、サーバ1台1台に冷却装置を組み込んで冷やすというシステムを、三洋電機とともに展開しているという。これにより発熱量を50%、電力量を最大25%削減できるということだ。
電力消費の管理では、ソフトウェアによって電力量を管理しようという方法が紹介された。具体的には、ハードウェアから出された電力消費量や熱量のデータを取得し、データセンター全体における電力消費量が設定された値以上にならないようにしたり、ピーク時以外はサーバの電源を落とすようにするなどのコントロールが可能だという。
IBMでは、これらの技術を使うことによって、現在「2」である自社のデータセンターのPUE値を「1.7」まで下げる予定だ。