「東京のグーグルオフィスでもサーチへのフィードバックを強めていく」(辻野部長)との言葉通り、Google Japanもサーチに関して独自のさまざまな取り組みを行ってきている。Mayer氏のプレゼンテーションの後、3人の同社日本人エンジニアが、国内での"チャレンジ"について語った。
日本独自のサーチサービス
倉岡寛氏 |
まずはグーグル 検索担当マネージャの倉岡寛氏が国内市場の戦略について説明を行った。同氏は2001年にグーグルが国内での営業を開始して以来、同社にとって最も大きな契機のひとつが「BiGLOBEとの提携だった」と語る。大手プロバイダのトップページにGoogleのサーチボックスを表示させたことで、国内での知名度が大幅にアップしたのだ。これを機に、同社は国内のビジネスパートナーを次々と獲得し、独自の地歩を築いていくことになる。
倉岡氏は、今回のトップページ変更にも大きくかかわっている。「日本市場に適した形で提供できたと思う」と語るが、アイコンを下に置いたり、乗り換え案内を表示させたりするなど、一見何でもないようなところに、日本人ユーザを意識した部分が見て取れる。
また、倉岡氏はiGoogleガジェット「急上昇ワード」の企画開発も行っている。これは急激に検索数が上がっているキーワードをリアルタイムに表示するガジェットで、同氏は「テレビを見ながら検索したい、という日本独自のライフスタイルを考慮した。携帯から利用できる点もポイント」としており、とくにテレビが放映されている時間帯は、キーワードがダイナミックに変化していくという。
サーチのクォリティを上げたい
賀沢秀人氏 |
次に、ソフトウェアエンジニアの賀沢秀人氏が「日本語におけるサーチの課題」として、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット…など「文字種が多様で豊富」であること、ユーザのリテラシが高いこと、ユーザ層が変わりつつあることを挙げた。「日本語は非常にすばらしい言語だが、サーチの技術者にとってはチャレンジ」と語る同氏は、日本語ユーザが何も考えなくとも欲しい情報が出てくるようにしたいという。
たとえば、パレスチナについて調べたいと思ったなら、本来"パレスチナ"と入力すべきなのだが、IMEのon/offが切り替わっていない状態で"paresutina"と打ってしまった場合でも、パレスチナの情報が得られるようにしているという。
また賀沢氏は「情報の鮮度」も重要だとし、「たとえば"オバマ"というクエリを入力したら、今ならWikipediaより"民主党の指名を獲得した"などのニュースが上位に来るべき」だとする。
「Googleのサーチはまだまだ改良の余地がたくさんある。もっとたくさんの人に検索してもらって、サーチの精度をもっと上げていきたい」(賀沢氏)
世界一のモバイルアクセス大国だけど…
岸本豪氏 |
最後に、モバイル担当プロダクトマネージャの岸本豪氏が、国内のモバイル検索の状況について説明を行った。
岸本氏は「日本のサーチユーザのうち25%は、携帯電話のみでネットワークにつながっている。携帯からのサーチアクセス数は、日本がダントツで世界一」とし、グーグルにとってもモバイル戦略が非常に重要な位置を占めていることを強調する。その理由として最たるものが、携帯のインフラが世界的に見ても高いレベルにあることだという。「米国のスタッフが日本に来ると、よく家電量販店に連れて行く。そこで3Gで、しかも7.2Mbpsでつながる携帯がずらっと並んでいるのを見ると、彼らはたいてい"ウチのブロードバンドより速い…"とショックを受ける(笑)」と岸本氏。
PCユーザと携帯ユーザは、サーチにおける活動時間帯も異なってくる。岸本氏によれば、たとえばPCユーザはビジネスが開始する午前8時 - 9時にアクセスのピークを迎えるが、携帯ユーザの場合は就寝前にピークを迎えるという。また、通勤時間帯のアクセス率も高い。そういった行動パターンの違いを考えたユーザエクスペリエンスの提供が求められるという。
そんなモバイル大国にあってのチャレンジは3つあるという。サーチそのもののチャレンジ、クロールとランキングのチャレンジ、日本文化特有のチャレンジだ。「キャリアからのIPしか受け付けないという携帯サイトもまだ多い。また、少ない情報からランキングするのは無理。見えないページから情報を探すことはできないので…。またキャリアや機種ごとに異なる絵文字や搭載ブラウザの問題などもある。Cookieを使えないキャリアもあるので、その対応が今後の課題。デバイスの進化にあわせてインタフェースを変えていくことも重要」(岸本氏)。
サーチの世界で独走を続けるGoogleだが、征服できていない領域はまだまだ数多く残されている。それでも彼らの目標は、米国のトップも日本のエンジニアも「見つからないをなくす」「ユーザエクスペリエンスの向上」で一致している。Googleサーチ技術者たちのチャレンジは、まだしばらく続きそうだ。