「役割」と「責任」を明確にする
体制の問題として、要件を決める役割と責任があいまいな場合がある。要件定義には、経営者、業務組織、IT組織、SIer、製品提供ベンダーなど関与者が多い。このため、誰が何をどこまで決めるのか、要件定義の完了を誰がどう判断するかを事前に明確にしておく必要がある。
要件を決めるのは発注者側の責任である。また、発注者はSIerに対して要件を説明する責任を負っている。時にSIerに開発依頼を出した後で、不明確な部分についてSIerと詳細を詰めていく場合があるが、このようなケースでは、SIerとの間で要件を確定する時期や要件変更を行う場合の手順についてあらかじめ決めておくべきである。
最後に - 要件定義ができる人材の育成を
最近では、システム運用を外部にアウトソースしている企業も多い。社内の情報システムに詳しい専門家が次々と定年を迎える一方で、法制度対応にも多くの人員を必要としている。この結果、システムの企画段階において、きちんと要件定義ができるスキルを持った人材が少なくなってきている。本来、要件定義は情報システムの開発において最も重要な仕事のひとつのはずである。要件定義には広い知識と技術が必要であるが、ぜひそのようなスキルを持った人材を積極的に育成してほしい。そして、業務本来の目的を達成し経営に貢献できる、情報システムの実現を推進していただきたい。
執筆者プロフィール
北川 誠 KITAGAWA Makoto
日立コンサルティング テクニカルディレクター。ミドルウェア製品/システムの開発、開発方法論策定の実務を経て、情報システム構想・計画立案、ITアーキテクチャーの策定とそれを維持する仕組みづくりを中心に活動中。