アウトソーシング全体の流れのなかで、いまや、止まらないのは、国外の企業への委託、いわゆるオフショアリングだ。同社に調査によれば、日本からのオフショアリング金額は、2004年が1,200億円、2005年が1,725億円、2006年は2,100億円で、この間、対前年比で年率平均30%という非常に高い伸びを示している。委託先の国別の内訳をみると、76%はやはり中国で、21%はインド、のこり3%が、フィリピン、ベトナム、一部がブラジルだ。日本のオフショアリング先の双璧である両国だが、委託業務の内容は、大きく異なる。中国の場合、組み込み式アプリケーション開発が過半で、業務アプリケーション開発はさほど多くないが、インドでは逆に業務アプリケーション開発が1/3以上を占めているという。山野井氏は「いまでは、リソースのグローバル化は避けられない。単に、安い人件費を求めてということから、リソースの調達ということに焦点が移っている。インドなどは、低コストより、スキルの集積地としての立場を積極的に打ち出している」と述べている。
また、これからのアウトソーシングを考えるうえで、これまた不可欠なのはSaaS型の取り組みだ。国内企業の導入状況はまだそれほど進んではいないが、財務・会計、人事・給与といった領域では、利用率が5%を超えているという(同社の調査による)。さらに、現在、利用していない分野での今後の対応については、積極利用との意向は12.2%だが、限定的に利用との意向は54.1%に上っており、同社では「実際に使用してみて、利点がわかり始めたのかもしれない。潮目は変わっている。領域を絞って、導入を考える時期ではないか」(同)とみている。
アウトソーシングは従来、基本的には情報システムに関連した開発、運用、保守などのような業務を委託することを指してきたが、近年、社内業務までをも委託するBPO(Business Process Outsourcing)の動きが活発化してきた。「BPOには2つの流れがある。1つは、データ入力のように、オフショア化の進展にともなうもの。もう1つは、給与計算、福利厚生などの領域で、ユーザー企業どうしが(さまざまな業務の機能を切り出して集約かした)シェアドセンターを設け、委託している」(同)例が出でいるという。
このように、アウトソーシングは多様化しているが、企業のIT部門は、委託すべき業務、機能と自社内で手がけなければならないものとを選択することが戦略上、重要となる。山野井氏は、事業戦略の核となり、ビジネスプロセス変革の中心となる社内コンサルタント、業務設計、インフラ構築の要であるアーキテクト、ITの世界を俯瞰できる目利きとしてのマーケッター、プロジェクトの優先順位づけ、最適化を担うプログラムマネージャといった分野は、内製化すべきだと説いている。